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ダ・ヴィンチは「若き日のモナリザ」を描いていた!? 作品をめぐる真贋論争が再燃

世界で最も有名な絵画《モナリザ》(1503-19)には、それより早くに描かれたもう1枚の作品があったのか? 一部の専門家は、若かりし頃のモナリザを描いた《アイルワースのモナリザ》がレオナルド・ダ・ヴィンチの手による真作だと主張。この絵がイタリア・トリノの展覧会で公開され、話題になっている。

レオナルド・ダ・ヴィンチ作とする研究者もいる《アイルワースのモナリザ》、カンバスに油彩、約84×65 cm。Photo: Courtesy Wikimedia Commons

レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナリザ》(1503-19)は、フィレンツェの絹商人であったフランチェスコ・デル・ジョコンドの妻、リザ・ゲラルディーニを描いたものとされる。

《アイルワースのモナリザ》に描かれた女性も、《モナリザ》とまったく同じポーズで座っている。しかし、そこにはいくつか大きな違いがある。アイルワースのほうが明らかに若く、顔が引き締まっているのだ。アイルワースとはロンドン郊外の地名だが、かつてその地の美術商がこの絵を所有していたことからこう呼ばれている。

《アイルワースのモナリザ》がダ・ヴィンチの真作であるという説に疑問を持つ専門家も少なくない。11月29日付の英ガーディアン紙で美術評論家のジョナサン・ジョーンズが指摘したように、ダ・ヴィンチは《モナリザ》を完成させるまでの長い間、何層も薄い絵の具を塗り重ねている。そうした中で、若かりし日の姿がなぜ、どうやって描かれたのかは解明されておらず、なぜ未完のまま放置されたのかも謎だ。ジョーンズはこの絵を、「不出来な複製品」や「意図的な偽物」という言葉でこきおろしている。

また、ダ・ヴィンチ研究の専門家で、オックスフォード大学で美術史の教授を務めるマーティン・ケンプも、アートネットニュースの取材に対し、この絵は複製品だと考えていると答えた。

一方、2011年に設立されたチューリッヒの非営利団体、モナリザ財団は、《アイルワースのモナリザ》がダ・ヴィンチの真作であることを証明しようと調査や鑑定を重ね、この作品をダ・ヴィンチによる2枚の傑作のうち早い時期に描かれたものだと主張している。

現在この作品は個人所有となっており、今のところ市場に出回る見込みはないが、その価値を憶測する向きは多い。たとえば、ダ・ヴィンチの傑作が再発見されたとして大ニュースになった《サルバトール・ムンディ》は、2017年のオークションで4億5030万ドル(当時の為替レートで約510億円)の値が付いた。その真贋をめぐっては議論が絶えないが、この作品は今でも美術史上最高額の記録を維持している。《アイルワースのモナリザ》が売り出されたら、この記録を上回るかもしれない。

問題の絵は現在、イタリア・トリノにある美術館、プロモトリーチェ・デッレ・ベッレ・アルティ(Promotrice delle Belle Arti)で2024年5月26日まで開催中の展覧会で見ることができる。(翻訳:石井佳子)

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