詐欺で訴えられたアートアドバイザーのリサ・シフが破産を申請
昨年、アメリカのアート業界を揺るがしたアドバイザー、リサ・シフによる詐欺事件。現在も裁判が続く中、被告のシフが破産を申請した。
リサ・シフはかつてアートメディアのArtsyに、「ニューヨークでもっとも優れたアートアドバイザーの一人」として称えられたこともある人物だ。過去のクライアントリストには、俳優のレオナルド・ディカプリオも名を連ねていた。
しかし昨年、一部のクライアントから、彼女がアート作品の購入資金を横領したとして訴えられていた。原告らは、作品の購入資金を彼女に支払ったにも関わらず、彼女から作品を受け取っていないと主張している。
今回シフは、連邦倒産法第7章(通称チャプターセブンと呼ばれ、日本での破産法に相当する)をニューヨーク州南部地区連邦破産裁判所に申請しており、これによって債務の一部が免除される可能性がある。申請書によると、シフはアメリカ合衆国内国歳入庁に100万ドル(約1億4000万円)以上、さらにニューヨーク州税務局に40万8,939.14ドル(約5800万円)、ニューヨーク市財務局に16万2191.17ドル(約2300万円)の支払い義務がある。
債務の中でも高額なものはシフが運営していたニューヨークの会社、SFAアドバイザリーが、その他の低額なものはシフ自身が負っていると見られる。その多くは現在も係争中。シフの弁護士はUS版ARTnewsの取材に対し、「破産申請したことで、シフに少し余裕ができた」と話している。
提出された書類によると、彼女はアート作品の保管施設やギャラリー、コレクターなど、さまざまな団体・個人に700万ドル(約10億円)近い負債があるという。債権者の中には、シフを相手取って係争中の2つの訴訟の原告であるコレクターのキャンディス・カーメル・バラシュや、47 Canal、Bortolami、Canada、Nina Johnson、Various Small Firesなどのギャラリーが含まれている。
リストアップされた負債のうち、最も大きなものはアダム・シェファーとリチャード・グロスマン、そしてブライアン&カレン・コンウェイに対するものだ。書類によれば、シェファーとグロスマンに対する負債は90万ドル(約1億3000万円)、コンウェイ夫妻に対しては88万6501.25ドル(約1億2700万円)に上る。シェファーはペース、チェイム・アンド・リード、リッソンといったギャラリーのディーラーを務めた人物で、グロスマンはバラッシュとともにシフを訴えた原告のひとり。コンウェイ夫妻は慈善家であり、妻カレンが管財人を務めるインスティテュート・オブ・コンテンポラリー・アート・ボストンに自分たちの名前を冠したギャラリーを構えている。
バラーシュとグロスマンは訴訟の中で、シフを介してエイドリアン・ゲーニーの絵画をサザビーズに売却したものの、その売却益の180万ドルが未払いであると主張。またバラッシュとその夫マイケルは、別の訴訟で、美術品購入のためにシフに660万ドル(約9億5000万円)を渡したが、その後、作品そのものを受け取っていないと証言している。
バラーシュ夫妻によれば、シフはこの購入資金を「豪華な旅行やショッピングなどで使ったか、他のクライアントに支払うべき債務あるいは他のクライアントの美術品購入代金に宛てた」という。
これらの訴訟が起こされてから数カ月の間に、シフが所有していたとみられる美術品は、裁判所が運営するオークションにかけられ、ギャラリーが入札している。裁判所がオークションの計画を承認すれば、フィリップスで売却されるものもあるだろう。
8月に提出された文書には、シフとSFAが保有する数百点の作品の概要が記されていたが、そこには、ジェフリー・ギブソンからウェイド・ガイトンまで、様々なアーティストの作品が含まれていた。
また12月には裁判所によって、SFAが以前所有していたニューヨーク・トライベッカの事務所を家主に明け渡すことも決定している。
from ARTnews