2025年からパブリックドメイン(著作権消滅状態)になった作品リスト。二次利用の注意点は?
フリーダ・カーロやアンリ・マティスといったアーティストが没後70年を迎えたことから作品の著作権が切れ、パブリックドメインとなった。しかし、二次創作のために使用する場合は、専門家に相談する必要があると、パブリックドメイン作品を専門に研究する団体は指摘する。
アート関係者の間で毎年1月1日は「パブリックドメインの日」と呼ばれる。なぜなら、著作権保護期間が切れた過去のアート作品や映像、そして楽曲などが新たにパブリックドメイン(知的財産権が消滅した状態、公有財産)に加わる日だからだ。今年は、アーネスト・ヘミングウェイの『武器よさらば』やウィリアム・フォークナーの『響きと怒り』などの文学作品に加え、アンリ・マティス、ロバート・キャパ、フリーダ・カーロの作品が著作権保護期間の満了を迎えた。また、ポパイやタンタンといった海外コミックスのキャラクターたちもパブリックドメインとなっている。
パブリックドメインとなった作品の一覧は、イギリスを拠点とする団体「Public Domain Review」とデューク大学の「Center for the Study of the Public Domain」から確認することが可能だ。
アメリカやイギリス、ヨーロッパでは、単一の著作者による作品は通常、著作者が存命している期間と死後70年間、著作権保護が継続される。しかし、Center for the Study of the Public Domainによると、アメリカの場合、米著作権局に登録されていない、あるいは著作権表示付きで発表されていない作品については、著作権保護が保証されない。また、1998年にアメリカで施行された著作権期間延長法により、1978年以前に出版または登録された作品には、95年の著作権保護期間が与えられるという(日本も欧米と同様に存命中と作者の死後70年間、著作権が保護される)。
マティス、キャパ、カーロはいずれも1954年に死亡していることから、今年から3人のアーティストの作品がパブリックドメインとして扱われる一方で、『武器よさらば』や『怒りの日』は、1929年に出版されてから95年以上が経過しているため、著作権保護の対象から外れる。同様に、『タンタン』や『ポパイ』も、エルジェやエルジー・クリスラー・シーガーが1929年にこれらのキャラクターが登場する作品を初めて発表したため、パブリックドメイン扱いとなる。
上記以外にもパブリックドメインとなった作品を以下にまとめたので、自身の創作活動に活用するのであれば参考いただきたい。
- 映画:『恐喝』(監督:アルフレッド・ヒッチコック)、『ダイナマイト』(監督:セシル・B・デミル)
- 書籍:『黄金の杯』(著:ジョン・スタインベック)、『自分だけの部屋』(著:ヴァージニア・ウルフ)、『若き詩人への手紙』(著:ライナー・マリア・リルケ)※いずれも原著
- 音楽:1924年に収録されたオリジナルレコーディング版の「ラプソディ・イン・ブルー」(作曲:ジョージ・ガーシュウィン)、 「雨に唄えば」の譜面(作詞:アーサー・フリード、作曲:ナシオ・ハーブ・ブラウン)、「ボレロ」(作曲:モーリス・ラヴェル)
- アート作品:サルバドール・ダリ《Illumined Pleasures》《The Accommodations of Desire》《The Great Masturbator》(いずれの作品も、1929年に刊行された雑誌『シュルレアリスム革命』、あるいは同年の展覧会にて発表されている)
ここで注意しておきたいのが、Center for the Study of the Public Domainが記しているように、視覚芸術作品に対する著作権保護の決定は、公にされている発表年と作られた年が異なっている可能性があることだ。同団体はブログ投稿において、ルネ・マグリットの《イメージの裏切り》を例に挙げ、明確な答えを見つけるには美術史家の意見を聞いたり、当時の文献をくまなく調べたりする必要があるとしている。つまりは、マティスの作品をプリントしたTシャツをグローバル展開し始める前に、法的な調査をしておくのが最善だということだ。(翻訳:編集部)
※ 編注:日本においては、日本との平和条約に署名した連合国・連合国民が第二次世界大戦前または対戦中に取得した著作権について、通常の著作権の保護期間に戦争の期間分(1941年12月8日、または著作権を取得した日のいずれか遅い日から平和条約発効時までの日数)を加算して保護する「戦時加算」の義務があるので注意が必要。
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