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今週末に見たいアートイベントTOP5: 今津景が初の大規模個展を開催、栗林隆30年の「脱・境界の試み」を辿る

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

今津景 タナ・アイル(東京オペラシティ アートギャラリー)より「unearth」ROH (インドネシア) 展示風景 2023 courtesy of The Artist and ROH

1. BIEN Magic Lantern Phase(Gallery TRAX)

展示風景。
展示風景。
展示風景。

現代の視覚メディアを問うBIENのドローイング

アーティストのBIENは、記号などの輪郭に着目し、その形状や意味を解体・再構築する抽象的な平面表現をはじめ、映像、彫刻、インストラクション、インスタレーションなどメディアを横断しながら表象に問いかける作品を発表している。

BIENは本展について、「魔術的な装置であった視覚メディアに囚われてしまっている現代。現代の私たちにとって、イメージの生成・破壊を同時におこなうドローイングという行為は、その魔術の根源に触れる唯一の方法なのではないか」と語っている。

BIEN Magic Lantern Phase
会期:2024年12月14日(土)〜1月26日(日)
場所:11:00 〜 17:00
時間: Gallery TRAX(山梨県北杜市高根町五町田 1245)
休館日:火水木、1月10日、1月は土日のみ開廊


2. 栗林隆 Roots(神奈川県立近代美術館 葉山)

《元気炉-初号基 富山(Genki-ro / No.0 Toyama)》2020 下山芸術の森 発電所美術館、富山、日本 写真:志津野雷
《Trees 2015(木々 2015)》2015 シンガポール美術館、シンガポール
《Betonhaus(コンクリートの家)》 1997 カッセル総合大学校内、カッセル、ドイツ

展示室の外に広がる栗林隆の作品世界

インドネシアと日本を往復しながら活動するアーティストの栗林隆は、「境界」をテーマに、ドローイングや、インスタレーションや映像などの多様なメディアを用いて身体的体験を観客にうながす作品を国内外で発表している。

本展では展示室の「外」のさまざまな空間を利用して作品が展開されており、本来展示空間ではないスペースのために発案されたインスタレーションが展示される。そのほか、タンカーを様々な生態系が共存する一つの場として、また、思想や作品を運ぶプラットフォームとして捉えた《Tanker Project》など自然と人間の関わりに対する本人の深い関心から生まれた、未発表のドローイングや映像作品なども展示することで、これまでの30年近くにおよぶ作家の思考をたどる。

栗林隆 Roots
会期:2024年12月14日(土)〜3月2日(日)
場所:神奈川県立近代美術館 葉山(神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1)
時間:9:30〜17:00(入館は30分前まで)
休館日:月曜(祝日は除く、12月29日〜1月3日)


3. 大森克己『心眼 柳家権太楼』(kanzan gallery)

大森克己が落語を写す。若手アーティストが作品を選んだ特別展示

1990年代より精力的に発表を続けている、写真家・大森克己による個展「心眼 柳家権太楼」。同ギャラリーで毎年行われている、若手アーティストがいま観るべき作品を選んだ特別展示だ。

本展では、ポートレートの旗手としても知られる大森が、古典落語の名人・柳家権太楼による口演の一部始終を撮影した。『心眼』は、盲目のあんま師が、妻と信心を重ねついに視力を得たところ、表面的な美醜に囚われて、それまで見えていた大切なものを見失ってしまうという演目。「写真」の宿命でもある「見ること」、そして「見えること/見えないこと」をめぐる、落語と写真の共闘を、ぜひ展示で体験して欲しい。

大森克己『心眼 柳家権太楼』
会期:2024年12月21日(日)〜2月2日(日)
場所:kanzan gallery(東京都千代田区東神田1-3-4 )
時間:12:00〜19:00(日曜は12:00〜 17:00)
休館日:月火(12月30日〜1月3日)


4. キャサリン・ブラッドフォード 「水の街を飛んでいく」(小山登美夫ギャラリー六本木)

Swimmers With Two Tubes
2024
acrylic on canvas
102.0 x 76.3 cm
©︎Katherine Bradford
Six Swimmers in River by the House
2024
acrylic on canvas
51.3 x 40.5 cm
Dancers Around the Fire
2024
acrylic on canvas
101.9 x 76.4 cm

映画のワンシーンを思わせる儚げでユーモアな作品群

アメリカのアーティスト、キャサリン・ブラッドフォードの個展。ブラッドフォードの作品は、海や、空、陸が、鮮やかな色のフィールドとして幻想的な地平線で交わる背景に、泳ぐ、踊る、歩く、飛ぶ、休むなどの動作をしている人物が浮かび上がる。その独自の絵画表現は世界的に評価を得ている。

本展では、ブラッドフォード作品の特色とも言える、印象的な色彩と構図を持つ新作ペインティング15点を発表する。タイトルと同名の作品《水の街を飛んでいく》では、繰り返し登場するモチーフである、空高く舞い上がる人物や水辺を捉えている。ブラッドフォードの作家としての変遷や独創的な制作へのアプローチ、そして彼女が描く、観る人の感情を喚起させる絵画の世界を体感する貴重な機会となっている。

キャサリン・ブラッドフォード 「水の街を飛んでいく」
会期:2024年12月27日(金)〜2月1 日(土)
場所:小山登美夫ギャラリー六本木(東京都港区六本木6-5-24)
時間:11:00〜19:00
休館日:日月祝(12月29日〜1月7日)


5. 今津景 タナ・アイル(東京オペラシティ アートギャラリー)

《Memories of the Land/Body》2020 油彩、キャンバス 300×600cm タグチアートコレクション photo: 木奥惠三 courtesy of The Artist and ANOMALY
《RIB》2021 油彩、キャンバス 200×300 cm フィンク・コレクション courtesy of The Artist and ANOMALY
《Bandoengsche Kininefabriek》2024 ミクストメディア サイズ可変 作家蔵 courtesy of The Artist and ROH
「Anda disini / You are here」カスヤの森現代美術館展示風景 2019 photo: 岡田顕 courtesy of MUSEUM HAUS KASUYA courtesy of MUSEUM HAUS KASUYA

2つの土地の記憶から生まれた壮大な時間軸の作品群

インドネシアを拠点に活動するアーティスト、今津景の初となる大規模個展。今津はメディアから採取した画像を、コンピュータで加工を施しながら構成、その下図をもとにキャンバスに油彩で描く手法で作品を制作している。近年ではインドネシアの都市開発や環境汚染に対するリサーチと、インドネシアの歴史や神話、生態系など複数の時間軸を重ね合わせてより普遍性を持つ作品へと発展させている。

故郷をテーマにした本展は、現在生活するインドネシアと自身のルーツである日本という二つの土地での経験と思考にもとづいた作品を通して展開される。鑑賞者に対しても自らが生きる場所について考える契機となることだろう。

今津景 タナ・アイル
会期:1月11日(土)〜3月23日(日)
場所:東京オペラシティ アートギャラリー(東京都新宿区西新宿3-20-2)
時間: 11:00 〜 19:00
休館日:月曜(祝日の場合は翌平日、2月9日)

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