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フリーダ・カーロの商標をめぐり相次ぐトラブル。バービーの次は、オンライン販売業者を提訴

フリーダ・カーロの商標を管理するフリーダ・カーロ・コーポレーションは、3月4日、カーロの商標を無断で使用し利益を得たとして、オンライン販売業者に対し2件の訴訟を起こした。

フリーダ・カーロ。Photo: Hulton Archive/Getty Images

「架空」の業者がフリーダ・カーロ グッズを無許可で販売

フリーダ・カーロの商標を管理するフリーダ・カーロ・コーポレーションによれば、オンライン販売業者は無断でフリーダ・カーロの商標ビジュアルを使用したグッズを製造し、アマゾンなどでネット販売していたとされる。フリーダ・カーロ・コーポレーションは業者に対して、利益の全額、あるいは「主張された商標の各模倣品使用に対して」200万ドル(約3億円)の支払いを求めているとCourthouse Newsが報じた。

同社は、イリノイ州の地方裁判所に提出した訴状で、「被告の画像、芸術作品および派生作品は、フリーダ・カーロの作品と事実上同一であり、かつ/または実質的に類似している。このような行為は米国商標法に違反し、フリーダ・カーロの著作物を侵害し、そして侵害し続けている」と主張する。

フリーダ・カーロは1954年に遺言書を残さずに亡くなったため、メキシコの財産法に基づいて彼女の姪であるイソルダ・ピネド・カーロが画家の財産権を相続。そして2003年、イソルダ・ピネド・カーロの娘のマリア・クリスティーナ・ロメオ・ピネドが、これらの権利を受け継いだ。その翌年、マリア・クリスティーナとベネズエラの実業家カルロス・ドラドによって、「フリーダ・カーロ」ブランドのライセンスと商業化を保護することを主な目的としたフリーダ・カーロ・コーポレーションが設立された。パナマのパナマ・シティを拠点とする同社は、現在カーロに関連する20以上の商標を管理している。

フリーダ・カーロ・コーポレーションが提出した訴状によると、無断でグッズを製造した業者は「架空の名前」を使ってアマゾンやその他のネット通販プラットフォームで商品を販売し、「共通の生産者」から商品を仕入れているという。

「被告は、複数のアカウントを運用するための戦術、発見されないための回避方法、係争中の訴訟、そして新たな訴訟の可能性について互いに連絡を取り合い、チャットやオンラインフォーラムで情報を交換している」と、フリーダ・カーロ・コーポレーションは訴状に記している。

長引く親族との軋轢と、商業主義への批判

フリーダ・カーロ・コーポレーションが法的措置をとったのは今回が初めてではない。2018年に同社は、マリア・クリスティーナ・ロメオ・ピネドとその娘であるマラ・デ・アンダ・ロメオに対し、商標権侵害でフロリダ州南部連邦地方裁判所に提訴している。

訴状によると、2011年頃からマリア・クリスティーナらは同社が商標権を所有していないと主張するようになった。2018年にマテルが同社と提携し、歴史を象徴する女性をたたえる玩具シリーズとしてカーロのバービー人形を販売した際にも、ソーシャルメディア上で、自分たちの同意がなければフリーダ・カーロの肖像を使用した商品を販売できないと発言。

一方、マリア・クリスティーナらカーロの親族は、マテル社がカーロの肖像を許可なく使用しており、人形の顔立ちもカーロの特徴を持っていないとして、メキシコの裁判所で訴訟を起こした。裁判官は親族に有利な判決を下し、マテルとメキシコ内の小売店にこの人形の販売中止を命じている。これに対してマテルは、「カーロに関するすべての権利を所有する」フリーダ・カーロ・コーポレーションから許可を得ているという声明を発表した。

こうした法廷闘争は、カーロ自身の政治的信条によって複雑化している。カーロは裕福な実業家を優遇する寡頭政治から立憲共和制に取って代わったメキシコ革命の理想と、民族主義的な熱狂に深く触発されていた。そして、ディエゴ・リベラと結婚した後、彼女は共産主義や反帝国主義のグループで活動するようになったという(カーロとリベラは、スターリン政権から逃れたレフ・トロツキーとその妻ナタリア・セドワを青い家でもてなした)。カーロはまた、アメリカやヨーロッパの資本主義体制にも批判的で、軽蔑を込めた内容を私信に記している。(翻訳:編集部)

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