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アメリカ大陸最古の工芸品? 約13000年前に制作された骨のビーズを発掘

アメリカ中部に位置するワイオミング州の遺跡から、パレオ・インディアンが制作した骨のビーズが発掘された。アメリカ大陸で発見された最古のものである可能性がある。

「ラ・プレールのマンモス」と名付けられた遺跡から出土したビーズ。わずか7mmほどの動物の骨でできている。Photo: Todd Surovell

人類が創作活動を始めたのはどれほど昔なのだろうか。この問題を解き明かす手がかりとなるのが、今回、ワイオミング大学のトッド・A・スロヴェルらが新しく発表した論文だ。

古代遺跡から出土するビーズ(数珠玉)の存在は、「人類の創作の起源」を知るヒントとして、これまでも考古学者たちの関心の的となってきた。アフリカ大陸ユーラシア大陸のいくつかの遺跡から、旧石器時代に制作されたビーズが発掘されている。

スロヴェルらの論文では、2016年に発掘されたわずか7mmほどの動物の骨が、アメリカ大陸で最古のビーズであることが明らかになった。この骨は表面に彫刻の跡があり、中心には直径1.6mmの穴が開いている。論文によると、このビーズは約13000年前に制作されたものであり、アメリカ大陸で発見された工芸品のなかでは最古の可能性があるという。

このビーズは、米中部に位置する「ラ・プレールのマンモス」と名付けられた遺跡から発掘されたもの。1989年に発見されたこの遺跡からは、マンモスを石器で解体した痕跡や、焚火の灰燼が検出されており、旧石器時代にこの地で生活していたパレオ・インディアンたちの生活拠点であったと推測されている。

ノウサギの指骨に彫刻

土地の権利をめぐるトラブルのために長く研究が休止状態にあったこの遺跡だが、このたびワイオミング大学の考古学チームが骨のビーズに注目し、改めてその起源を明かすために分析調査を実施した。そして、マイクロCT画像の解析と「ZooMS」と呼ばれるコラーゲンを用いた質量分析により、当該の骨はノウサギの後肢の指骨であることが判明したという。

これが単なる骨の残骸ではなく、旧石器時代の工芸品である証拠としてチームが挙げた根拠はいくつかある。例えば表面が滑らかであり、周囲で発見される他の動物骨と形状が異なっていること。または、遺跡の一帯がパレオ・インディアンの生活拠点であり、野生動物が近寄る可能性が低いことなどだ。

絢爛な芸術作品がすぐ身近にある現代人は、簡素な骨のビーズなど取るに足らないと思うかもしれない。しかし、人類がまだ苛烈な生存競争の渦中にあった旧石器時代において、なんらかのきっかけによってビーズという工芸品が制作された事実は、人類の創作意欲の源泉を追究するにあたって極めて重要ではないだろうか。

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