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大人気ゴッホ展のため英ナショナルギャラリーが1日限りの24時間営業を実施。チケットは即完売

ロンドン・ナショナルギャラリーで開催されたゴッホの回顧展が、28万人が来館する大ヒットを記録。そこで同館は1月17日に13年振りとなる24時間開館を実施した。

2024年9月、ロンドン・ナショナルギャラリーで始まったゴッホの回顧展「Van Gogh: Poets and Lovers(詩人と恋人たち)」の会場風景。Photo: Judith Burrows/Hulton Archive/Getty Images

ロンドン・ナショナルギャラリーでは、ゴッホの回顧展「Van Gogh: Poets and Lovers(詩人と恋人たち)」(2024年9月14日~2025年1月19日)が開催されたが、12月中旬にはチケットは完売。28万人が来館する大ヒットを記録した。そこで同館は、1月17日金曜の午前10時から1月18日土曜の午前10時までの24時間開館を実施した。

徹夜の開館は、200年の歴史を持つ同館では2度目となる。第1回は2012年の「Leonardo da Vinci: Painter at the Court of Milan(レオナルド・ダ・ヴィンチ:ミラノの宮廷画家)」で、実に13年振りだ。

回顧展「Van Gogh: Poets and Lovers」では、《星月夜》(1888、オルセー美術館所蔵)や、《自画像》(1889、ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵)、《ひまわり》(1889、フィラデルフィア美術館所蔵)など世界中からゴッホの名画60点が一堂に集められた。24時間開館にあたり、追加で販売されたチケットは1日足らずで完売したという。

当日の午前1時にガーディアン紙が取材したところ、会場は大勢の人で賑わっていた。息子ダリウスと共に来館したビバリー・カヌガは「午前3時に予約していたら、もっと静かだったかもしれませんね」と話したが、ダリウスが「その時間だと眠っているでしょう」と合いの手を入れた。

友人と一緒に来ていたソフィー・ジャクソンに、この時間帯にギャラリーに足を踏み入れると、いつもとは違う雰囲気を感じるか尋ねた。すると、「どちらかというと、そうですね。深夜にゴッホの作品を見ると、なぜかより深い敬意の念が感じられます」と答えた。

一方で、ジョンという青年は観覧前に少量の幻覚キノコを摂取してきたと打ち明けた。彼は、「昼間では、そのようなことは出来ません。夜はこの豊かな感覚で作品鑑賞するにふさわしい雰囲気を提供してくれるのです」と説明する。

1870年代、20代前半だったゴッホは、バーでアブサンに酔う常連客の一人だった。 仕事のためロンドンで暮らした2年間の間にナショナル・ギャラリーに何度も訪れて、ターナー、コンスタブル、ミレイといったイギリスの画家たちの作品を創作の糧にしていった。後に、弟であり経済的な支援者でもあったテオに宛てた手紙の中で、ゴッホはエミール・ゾラの言葉を引用して「退屈で死ぬくらいなら、情熱で死ぬ方がましだ」と書いている。この言葉には、激しく、自滅的なまでの情熱によって芸術を追求したゴッホの生き方がよく表れている。

深夜の来館者であるジョセフ・ディーンは、真夜中過ぎに訪れた観客の方が、そのような強い感情に同調できる可能性があると話す。彼は、「この時間に美術館に来るには、ある程度の情熱がなければなりません。より意欲的な人々である可能性が高いと思います」と分析する。

ナショナルギャラリーのディレクター、ガブリエレ・フィナルディ卿は、24時間開館を実施した理由について、こうも語っていた

ルシアン・フロイドデイヴィッド・ホックニーフランシス・ベーコンといった著名な芸術家たちがインスピレーションを求めて早朝に我がギャラリーを訪れたように、来館者の方々にもインスピレーションを得てほしいと願っています。特にフロイドは、『私はこのギャラリーをまるで医者のように利用している。アイデアと助けを求めてここに来るのだ』と発言していました」

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