英V&A博物館が「見せる収蔵庫」を2025年に開館! デヴィッド・ボウイ・センターも同時オープン
ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)は10月22日、収蔵庫兼展示施設となる分館「V&Aイースト・ストアハウス」を2025年5月31日にオープンさせると発表した。
10月22日、ロンドンに本館があるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)は、ロンドン東部のストラットフォードに収蔵庫兼展示施設「V&Aイースト・ストアハウス」を2025年5月31日にオープンさせると発表した。
アートニュースペーパーが伝えるところによると、V&Aイースト・ストアハウスは、2012年に開催されたオリンピックのメディア・ブロードキャスト・センターを一部改装する形で建設された。広さ1万6000平方メートルの館内には、V&Aの25万点以上の所蔵品に加え、35万冊の図書、約1000点のアーカイブが収蔵される。その内容はグラストンベリー・フェスティバルのアーカイブからPJハーヴェイやエルトン・ジョンの衣装、ヴィンテージのサッカーシャツ、 ディオールやシャイアペリの高級クチュール、ローマ時代のフレスコ画、サムライの刀、iPhoneに至るまで多岐に渡る。
同館の設計を担当したのはニューヨークの学際的デザインスタジオ、ディラー・スコフィディオ+レンフロだ。「物理的な障壁を取り払うことで、これまでにないアクセスと高い透明性を実現し、来館者がコレクションにこれまで以上に近づけるようにする」ことを目的とした館内にはガラスケースがなく、所蔵品の出し入れを容易に出来る「キット・オブ・パーツ」システムが取り入れられている。また、同館は「無休のオーダー・オブジェクト・サービス」をうたっており、来館者はオンラインで都合の良い日時を予約するだけで、所蔵品を簡単に閲覧できる。収蔵品に関する解説システムも充実しているため、セルフガイドツアーで知識を深めることも可能だ。
そのほか、館内を「ハック」する形で展開する100以上のキュレーションされたミニ展示もみどころ。予定されているのは、ファッションデザイナーのイマーン・アイシ、写真家のマリエット・パシー・アレン、アーティストのザンセ・ソマーズ、サナ・ゲテジャの最近の収蔵品からロンドン東部の豊かな伝統であるものづくりや芸術・社会活動を明らかにするものや、ロンドン東部・ポップラー地区にあった元住宅団地ロビン・フッド・ガーデンズの外壁の一部と17世紀の驚異的な列柱アグラ・コロネードを並置することで新たな視点を提案するものなど。倉庫の各所に設置された小型ディスプレイでは、トランスジェンダーおよびノンバイナリーアーティストの特集のほか、アートファンドの新しい収集と研究、写真家のマリエット・パシー・アレンなど、アートファンドが支援するアーティストによる新しい収蔵品シリーズを紹介する。
同館の敷地内には「デヴィッド・ボウイ・センター」も開館する。これは2023年2月にウクライナ人実業家レナード・ブラヴァトニックによって設立されたブラヴァトニック・ファミリー財団とワーナー・ミュージック・グループからの寄付1000万ポンド(約20億円)で取得された、デヴィッド・ボウイのアーカイブとコレクションを展示するための施設だ。V&Aの声明によると、展示を通して「ボウイのアルバム『アラジン・セイン』や、彼が創出したキャラクター『シン・ホワイト・デューク』などの秘話や、ラナ・デル・レイからリル・ナス・X、三宅一生まで、彼がクリエイターたちに与えた多大な影響が明らかになる」という。
また、同館の近くには2026年春にV&Aイースト博物館もオープン予定だ。V&Aイースト・ストアハウスと合わせると、イギリスにおけるここ数十年で最大の博物館開発計画となる。総費用は、2000年に行われた大英博物館のグレート・コート大規模改装にかけた1億ポンド(現在の為替で198億)を上回る見込みだ。
V&Aの副所長兼COOのティム・リーブは、V&Aイースト・ストアハウスのオープンを伝える声明で、「ロンドンの創造的な伝統が息づき、才能あるクリエイターたちが集うこのエリアにおいて、国立コレクションへの新たなアクセス基準を打ち立てるという私たちの野望を実現するものです。(同館で)来館者は博物館の裏側にある魔法のような世界に浸り、自分だけの旅を創り出す力を得ることができるのです」と語った。