過去最低のクオリティ。「顔なし」の故エリザベス女王夫君像にケンブリッジ市議会が撤去命令
のっぺらぼうの故フィリップ殿下の彫像が、ケンブリッジ市議会によって撤去を命じられた。英ガーディアン紙によると、数年前に同市中心部に出現したこの像は、そもそも無許可で設置されたものだった。
イギリス・ケンブリッジ市の中心部にあるオフィスビル前には、2022年に亡くなったエリザベス女王の夫君である故フィリップ殿下の彫像が大学の式服姿で立っている。高さ約4メートルもある像の顔は真っ白で、表情がわからない抽象的な造形だ。
ケンブリッジ市議会のパブリックアート担当官であるナディーン・ブラックは、以前この作品を「これまで議会に提出された作品の中で最低レベル」と評し、こう批判していた。
「この像には所有者がおり、サイトスペシフィックな作品でもなければ設置場所と何の関係もありません。また、周囲の環境からすると大きすぎ、地域開発の質を損なうものです」
通称「ザ・ドン」として知られるこの像は、フィリップ殿下のケンブリッジ大学総長在任35年を記念し、15万ポンド(直近の為替レートで約2900万円)を投じて制作されたものの評判は散々。酷評された像の作家が自ら名乗り出ることはなかったが、発注者の不動産デベロッパー、Unexグループによると、ウルグアイの彫刻家パブロ・アチュガリーによるものだという。一方のアチュガリーはそれを否定している。
フィリップ殿下像の設置計画は2014年に提出されたが、許可は下りていない。それにもかかわらず、今から4年ほど前、市の中心部にあるチャーターハウスというオフィスビルの前に像が据えられた。
ケンブリッジ市議会議員で、都市計画・建築管理・インフラ担当のケイティ・ソーンバローは自らのウェブサイトにこう記している。
「依頼主の大手不動産デベロッパー以外、像は誰からも受け入れられていないようです。撤去されるのは喜ばしいことですが、もしこれをデベロッパーが放置したら、撤去の執行に警察の時間やコストを費やさざるを得なくなることには納得がいきません」
3月5日に土地を所有するUnexグループに送られた執行通知は、彫像には「有害で重大な影響」があるとして、不服を申し立てない限り8月までに撤去を実施することを求めている。(翻訳:石井佳子)
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