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2024年のトレンドカラーは、激動の時代に平和やウェルビーイングを想起させる「ピーチ・ファズ」

12月7日、マイアミ・アート・ウィークの一環として、色見本帳で著名なパントン社が、2024年のトレンドカラーを発表した。

2024年のトレンドカラー「ピーチ・ファズ」 Photo: COURTESY PANTONE

パントン社が、ファッションデザイン、広告のトレンドを調査するパントン・カラー・インスティテュートのアナリストやデザイナーとともに選ぶ「トレンドカラー」は、今回で25回目となる。2024年のトレンドカラーに選ばれたのは、ピーチ・ファズ(正式名称 パントン13-1023 TCX)。公式プレスリリースでは、「gentle=穏やか、やさしい」「nuturing=育てること」などと表現されており、例年の大胆な色合いとはひと味違っている。

例えば昨年のトレンドカラーであるビバ・マゼンタはピンクレッドのような色合いで、ピーチ・ファズの繊細さとは対照的だ。同社のニュースリリースではこの色の「心地よさ」がアピールされているが、ほかにも様々な感情を想起させる。

ピーチ・ファズは「使い勝手の良さ」も特徴だ。ニュートラルな色だけに、その用途は、電子タバコや化粧品のコントゥアリングスティックまで、実に幅広い。ニューヨーク・タイムズ紙のカリー・ホルターマン記者によれば、2023年は、小売業者が若年層をターゲットにしたことでこの傾向がより顕著になったという。ファッション業界においても、ランウェイでシアーなスタイルが台頭するなか様々なニュートラルトーンがトレンドとなった。

イラーナ・ハリス=バブーのようなアーティストは、インフルエンサー・カルチャーを代表する「どこにでもあるような美しさ」への批評として、「角の立たない」ピーチ・トーンを利用した。2021年にテネシー州の美術館で開催された彼女の展覧会について、批評家のロバート・アラン・グランは、ハリス=バブーのベージュの色使いは1962年まで「肌色」と呼ばれていたクレヨラ(*1)のピーチを彷彿とさせると書いたが、まさにこの色はパントン社のピーチ・ファズに酷似している。


*1 アメリカ製クレヨンの老舗ブランド。

言わずもがな、パントン社が定めるトレンドカラーは来年の傾向を予測するものだ。イスラエル・ハマス紛争が激化する中、2024年にはアメリカ大統領選挙が行われる。パントン社のエグゼクティブ・ディレクター、レアトリス・アイズマンは、声明の中で、ピーチ・ファズという色は観客や消費者に「平和」を連想させ、「私たちのウェルビーイング」に良い影響を与える可能性があるという。(翻訳:編集部)

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