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  • 2024.04.12

今週末に見たいアートイベントTOP5: 日本の美術館で初のブランクーシ展、マーク・レッキ―が原点回帰の作品を披露

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

コンスタンティン・ブランクーシ 《接吻》 1907-10年、石膏、高さ28.0cm、石橋財団アーティゾン美術館

1. マーク・レッキ―「FIORUCCI MADE ME HARDCORE FEAT. BIG RED SOUNDSYSTEM」(エスパス ルイ・ヴィトン東京)

「MARK LECKEY – FIORUCCI MADE ME HARDCORE FEAT. BIG RED SOUNDSYSTEM」 エスパス ルイ・ヴィトン東京での展示風景(2024) Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris Photo credits: © Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

1990年代の終わりと現在。マーク・レッキ―の2つの時代を結ぶ展覧会

マーク・レッキーは、ダミアン・ハースト、トレイシー・エミン、サラ・ルーカスらと共に、1980年代末のイギリス・ロンドンで「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」として頭角を現し、その後すぐにアートシーンからほぼ姿を消す。そして1990年代の終わりに再び戻ってきた。大衆文化とそのDIY的アプローチに対する彼の関心を例証したビデオ作品、《Fiorucci Made Me Hardcore》(1999)は、レッキーのアートシーンへの復帰を告げる作品だ。また、音楽バンドdonAtellerとJack Too Jackの創立者でもある彼は、レイヴ音楽を強烈な芸術表現のかたちと捉え、巨大なスピーカーの壁を立ち上げた作品《SoundSystems》(2001-2003)でそれを表現した。本展では、それら2つの初期作品を合わせることで、このDIY的アプローチを完璧に統合した《Fiorucci Made Me Hardcore with SoundSystem(10周年記念リマスター版)》(1999-2003-2010)を展示する。

また、レッキーの作品世界は、自身を取り巻く文化的、物質的環境からインスピレーションを得ており、オンラインかつデジタルで、サイバネティクス技術と生体工学技術に支えられている。彼はそれを、作品にもよく登場させる自身が夢中なモノたちを通して語る。本展で展示される漫画のキャラクター フィリックス・ザ・キャットを作品に取入れた作品《Felix the Cat》(2013)も、1928年に初めてテレビで放映された最初の主題となったこのキャラクター、つまりデジタル時代の幕開けのシンボルを援用することによって、この存在を自らのものにしたのだ。

マーク・レッキ―「FIORUCCI MADE ME HARDCORE FEAT. BIG RED SOUNDSYSTEM」
会期:2月22日(木)~ 8月18日(日)
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京(東京都渋谷区神宮前5丁目7-5 ルイ・ヴィトン 表参道ビル 7F)
時間: 12:00 ~20:00

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2. ニック・ドイル 「American Blues」(ギャラリーペロタン東京)

View of the exhibition "American Blues" at Perrotin Tokyo. Photo by Keizo Kioku. Courtesy of the artist and Perrotin.

ニック・ドイルが提示するアメリカ文化と男性性の問題点

ブルックリン在住のアーティスト、ニック・ドイルの日本初個展。ドイルの代表作である、巨大な壁掛けの立体作品は、デニムをコラージュして制作されている。デニムはアメリカ文化の象徴であり、マーロン・ブランドやマリリン・モンロー、ブルック・シールズやビヨンセに至るまで歴代の全ポップ・アイコンたちが着用してきた素材でもある。そして、そのデニムの原材料となる「インディゴとコットン」は、いずれもアメリカ奴隷制下の経済において主要な換金作物であり、アメリカ文化がいかにホワイトウォッシュ(白人化)されているかを示している。

本展は、ドイルの代表的なシリーズと立体作品を展示する。それらの作品には、ネクタイやドレスシューズ、小瓶のジン、縛られたロープなど、男性性を感じさせるモチーフが散りばめられている。それは、「アメリカーナ」の語彙を通して、強欲、過剰、有害な男らしさについて考察するためだ。作品が巨大であるのは、人目を引きつけ、作品を見ることを促し、素通りさせない、シンプルかつ効果的な手法でもある。ドイルの素直さから生まれた、無邪気で直接的な戦術なのだ。

ニック・ドイル 「American Blues」
会期:3月6日(水)~ 4月27日(土)
会場:ギャラリーペロタン東京(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F)
時間: 11:00 ~18:00
休館日:日・月・祝


3. ブランクーシ 本質を象る(アーティゾン美術館)

コンスタンティン・ブランクーシ《魚》1924-26年(1992年鋳造)、磨かれたブロンズ、13.5×42.0×3.0cm、ブランクーシ・エステート

日本の美術館では初。約90点でブランクーシの創作を総覧

ルーマニアに生まれ、20世紀の初頭のパリで活躍した彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)。彼は純粋なフォルムの探究を通じて、ロダン以後の20世紀彫刻の領野を切り拓いた存在として知られる。その名を知られながらもその彫刻作品を主体とする大規模な展覧会は、これまで日本の美術館で開催されておらず、本展が初めての機会にあたる。

本展は、ブランクーシ・エステートおよび国内外の美術館等より借用した彫刻作品約20点に、絵画作品、写真作品の計約90点を集めた。ブランクーシの創作形成期の彫刻から、直彫りに至り、フォルムを追求した円熟期までの全キャリアを辿る構成で展示する。また、独自の道を歩んだようにみえるブランクーシの創作の中で、キュレーターおよびエージェントとしてブランクーシのアメリカでの受容に尽力したデュシャン、そして、短期間ながら助手としてブランクーシのもとで直彫りを学んだイサム・ノグチなど、同時代との間にみられるさまざまな接点を、彼らの作品と共に紹介する。

ブランクーシ 本質を象る
会期:3月30日(土)~ 7月7日(日)
会場:アーティゾン美術館 6階展示室( 東京都中央区京橋1丁目7-2 )
時間: 10:00 ~18:00(5月3日を除く金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(4月29日、5月6日を除く)、4月30日、5月7日


4. ホー・ツーニェン エージェントのA(東京都現代美術館)

《一頭あるいは数頭のトラ》2017年、映像スチル

最注目アーティストのデビューから最新作までを網羅

シンガポールを拠点に活動する1976年生まれのアーティスト、ホー・ツーニェンの個展。ツーニェンは、東南アジアの歴史的な出来事、思想、個人または集団的な主体性や文化的アイデンティティに独自の視点から切り込む映像やヴィデオ・インスタレーション、パフォーマンスを制作してきた。これまでツーニェンは第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2011年)のシンガポール代表となったほか、豊田市美術館(2021年)、山口情報芸術センター[YCAM](2021年)、ハンブルク美術館(ドイツ、2018年)、ビルバオのグッゲンハイム美術館(スペイン、2015年)などで個展を開催している。

本展は、ホーのこれまでの歴史的探求の軌跡を辿るべく、最初期の作品含む6点の映像インスタレーション作品を展示するとともに、最新作を紹介する。ホーが監督と脚本を務めたデビュー作《ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり》(2003)は、シンガポールという国名の由来「シンガプーラ(サンスクリット語でライオンのいる町)」とその地を命名したとされるサン・ニラ・ウタマに関する諸説を巡りながら、イギリス人植民地行政官スタンフォード・ラッフルズを建国者とする近代の建国物語を解体する。

また、3Dアニメーションを用いた《一頭あるいは数頭のトラ》(2017)では、トラを人間の祖先とする信仰や人虎にまつわる神話をはじめ、19世紀にイギリス政府からの委任で入植していた測量士ジョージ・D・コールマンとトラとの遭遇など、シンガポールの歴史における支配と被支配の関係が、姿を変え続けるトラと人間を介して語られる。ホーの最新作で新たな展開ともいえる《時間(タイム)のT》(2023)では、ホーが引用しアニメーション化した映像の断片が、アルゴリズムによって、「素粒子の時間から生命の寿命、宇宙における時間まで」という時間の様々な側面とスケール—を描き出すシークエンスで編成される。

ホー・ツーニェン エージェントのA
会期:4月6日(土)~ 7月7日(日)
会場:東京都現代美術館 (東京都江東区三好4-1-1 木場公園内)
時間: 10:00 ~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(4月29日、5月6日を除く)、4月30日、5月7日


5. 温泉大作戦 The Final!(Satoko Oe Contemporary、Hagiwara Projectsほか)

国内15ギャラリーが海外のギャラリーとコラボ展を開催

国内のギャラリーがホストとなり、海外のゲストギャラリーとコラボレーション展を開催するほか、温泉旅行でのコンファレンスを行って交流を深めるというユニークなプログラム。MISAKO & ROSENは香港のEmpty Gallery、アメリカのKristina Kiteをゲストに招き、 プライベートをテーマに既存の文脈をユーモラスにかき乱すような写真作品を発表する題府基之と、台湾系アメリカ人のアーティスト、ジェイムズ・T・ホン、ニューヨークを拠点にするジャスパー・マルサリス、ロサンゼルスとドイツ・ベルリンで活動するディーン・サメシマのグループ展を開催する。

また、ANOMALYでは、パリのAir de Parisを招いてベルリンとニューヨークを拠点に活動するエリザ・ダグラスによる個展を開催。近作のパフォーマンスビデオ作品とペインティングを紹介する。小山登美夫ギャラリー天王洲では、ジョージア、トビリシのArt Beatとの共同で、住んでいる環境に対する人間の欲望による変化に着目して制作を行った桑原正彦と、1955年ジョージア、トビリシ生まれで、31歳で絵画を始めたナト・シルビラッゼの2人展を行う。

温泉大作戦 The Final! ※開催日時など詳細は各ホストギャラリーのHPを確認
会期:4月6日(土)~ 4月21日(日)
会場: Satoko Oe ContemporaryHagiwara Projects無人島プロダクション小山登美夫ギャラリー天王洲ANOMALY天王洲Take Ninagawa青山 l 目黒TALION GalleryYutaka Kikutake GalleryMISAKO & ROSENFig.、KAYOKOYUKIXYZ collective4649 presenting in CAPSULE

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