今週末に見たいアートイベントTOP5: ローレンス・ウィナー最初期の資料が特別公開、浮世絵から玩具まで動物モチーフ240点が集結
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!
1. 「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」(東京ステーションギャラリー)
大都市江戸・東京で育まれた人と動物のつながり
江戸幕府創設から約420年。京都、大坂に並ぶ三都の1つだった江戸は、その後、巨大都市・東京として発展した。2022年にフランスのパリ日本文化会館で好評を博した「いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし」展を拡充した凱旋帰国展である本展では、そんな江戸と東京に暮らした人々がどのように動物とかかわってきたのかを、最新の調査研究と初公開作品を含む充実した作品群から紹介する。
展示を構成するのは、現在休館中の江戸東京博物館の61万点にも及ぶコレクションから厳選された、約240点の美術品や工芸品。そこには、壮大な狩猟の記録画、歌麿や広重ら人気浮世絵師の錦絵、そして動物たちのイメージをデザインモチーフへと昇華した温かみのある郷土玩具や精巧な工芸品などが含まれる。
「どうぶつ百景 江戸東京博物館コレクションより」
会期:前期 4月27日(土)~ 5月26日(日)、後期 5月28日(火)~ 6月23日(日)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
時間:10:00 ~18:00(金曜は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜(6月17日を除く)
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2. ここに いても いい リトゥンアフターワーズ:⼭縣良和と綴るファッション表現のかすかな⽷⼝ (アーツ前橋)
ファッションとともに向き合う自己と社会
神話などからインスピレーションを得た物語的なコレクションや、ファッションの私塾「coconogacco(ここのがっこう)」の主宰で知られる山縣良和のファッションレーベル「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」。「writtenafterwards」とは、「あとがき」や「追記」を意味する言葉だ。
美術館での初個展となる本展では、リトゥンアフターワーズのこれまでの歩みを紹介するとともに、ファッションを通して常に自己と社会に向き合ってきた山縣が考える日本社会とファッション表現の「いま・ここ」を、新作インスタレーションで浮かび上がらせる。
メインギャラリーでは、2024年現在の日本社会を表象する「家」を、リトゥンアフターワーズの過去のコレクションと、群馬県内の空き家や廃屋から移設した家財道具を組み合わせて表現する。中でも注目したいのは、その最後の展示室に追記(writtenafterwards)された、何気ない家族の情景や子ども服からインスピレーションを得た最新コレクションだ。そこには昨年父親となり、東京で子育てをはじめた山縣個人のパーソナルな変化が色濃く反映されている。
ここに いても いい リトゥンアフターワーズ:⼭縣良和と綴るファッション表現のかすかな⽷⼝
会期:4月27日(土)~ 6月16日(日)
会場:アーツ前橋(群⾺県前橋市千代⽥町 5 丁⽬ 1−16)
時間:10:00 ~18:00(入場は30分前まで)
休館日:水曜
3. 金川晋吾 「祈り/長崎」(MEM)
長崎で写す、過去と神への祈り
写真と言葉を並置させながら、親子や血縁という「私的」とされるような関係を淡々と、しかしときにユーモアを織り込みながら表現してきたアーティスト、金川晋吾。本展は、金川自身の身体とキリスト教の信仰を媒介にして、「祈りの土地」として語られることの多い長崎を写真で表象しようと試みる。
金川は平和祈念像の成立の歴史的経緯に批判的な目を向けながらも、この像の巨大な肉体がもつ空虚さや、特定の宗教に依拠することを回避しようとしたが故の異種混交性などに惹かれるという。
展示されるのは、前述の平和公園に関連する光景や、長崎を歩いていると頻繁に目にするマリア像やキリスト像、自宅の祭壇で祈るカトリック信徒など、なんらかの形でキリスト教信仰に関わっている人たちや関連の建物、場所を撮影した作品。それらのあいだに、金川自身のポートレイトが挟み込まれる。
金川晋吾 「祈り/長崎」
会期:5月11日(土)~ 6月2日(日)
会場:MEM(東京都渋谷区恵比寿1–18–4 NADiff A/P/A/R/T 3F)
時間:13:00 ~19:00
休館日:月曜 (祝日の場合は翌日)
4. ローレンス・ウィナー 「EMPTIED UNTIL FULL(いっぱいになるまでからっぽに)」(TARO NASU)
ローレンス・ウィナーが作り出した彫刻的言語の世界
一つの文化が意義深いものであるためには、個々人が等しくその実現のために責任を持つべき──そんな信念のもと制作活動に励み、2021年に死去したローレンス・ウィナー。1968年に創作活動を始めて以来、「言語形式の作品は三次元空間におかれた一つの思考過程である」と考え、言語や記号を平面にグラフィカルに表現した作品を発表。これらを「彫刻」と呼んだ。
同ギャラリーで3度目の個展となる本展では、いかに作品が制作されるかについての媒介変数(パラメーター)をまとめ、アーティストとしての自らの姿勢を語った1968年のステートメント「宣言(Declaration of Intent)」が特別公開されるほか、ウィナーが「彫刻」と呼ぶ4点とドローイング2点、さらには特別なエディション作品を通じて彼の世界観を鑑賞者に提示する。
ローレンス・ウィナー 「EMPTIED UNTIL FULL(いっぱいになるまでからっぽに)」
会期:5月11日(土)~ 6月15日(土)
会場:TARO NASU(東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル4F)
時間:11:00 ~19:00
休館日:日月祝
5. 吉増剛造 「ネノネ」(SIGNAL)
詩人・吉増剛造、声なき声の音「ネノネ」に触れる
詩人の吉増剛造は、60年以上にわたり詩や言語の可能性を極限まで追求し、比類なき現代詩の前衛的表現を次々と生み出してきた。今回の展示で吉増剛造がインスピレーションを求めたのは、舞踏家土方巽の肉体から放たれる特異な「声」。それは日本文化に微かに息づく「声なき声」や「音なき音」から影響を受けたものであった。歴史に消えてしまいそうな小さな「音の根」=「ネノネ」。詩人と舞踏家、日本を代表するアーティストの表現を通じて「ネノネ」にふれることで鑑賞者に創造性の芽を育む機会を提供する。
本展では、吉増剛造による書き下ろしの原稿展示や公開制作に加えて、土方巽に関する資料が展示される。また、5月17日(金)18:30から、MARYLIAと吉増によるライブパフォーマンス、6月1日(土)16:30から、東京大学名誉教授の小林康夫と吉増のトークショーも開催される。
吉増剛造 「ネノネ」
会期:5月14日(火)~ 6月8日(土)
会場:SIGNAL(東京都港区虎ノ門1-2-11 The ParkRex1F)
時間:11:00 ~ 23:00(土曜は18:00時まで)
休館日:日月祝