ARTnewsJAPAN

バイデン政権が約9440億円の学生ローン免除を発表。経営破綻した美大ネットワークの学生を救済

財政難によって2023年に全校閉鎖した私立美術大学ネットワーク、アート・インスティテュート。同校は、虚偽の就職率や給与水準の説明を入学希望者に行っていたことから、バイデン政権は2004年1月から2017年10月に在籍していた約31万人の学生ローンの返済を免除すると発表した。

2023年2月にワシントンD.C.で開催された学生ローン救済に関する公聴会で、借主をはじめとする活動家が抗議している様子。Photo: Jemal Countess/Getty Images for People's Rally to Cancel Student Debt

2023年にすべてのキャンパスが閉鎖した私立美術大学ネットワーク、アート・インスティテュート。バイデン政権は、同ネットワークの大学に通っていた31万7000人の学生が負っている総額61億ドル(約9440億円)の学生ローンの返済を免除することを発表した

免除の対象となるのは、エデュケーション・マネジメント・コーポレーション(EDMC)がネットワークの運営を担っていた2004年1月1日〜2017年10月16日に在学していた学生たちだ。

米教育省の声明によると、その期間においてアート・インスティテュートは、「就職率や卒業生の給与、キャリア支援において入学希望者に虚偽の説明を大々的に行っていた」という。

大学側は、卒業生の80%以上が同校での学びに関連した職に6カ月以内に就いたと公表していたが、教育省の調査によると、その割合は約57%だったという。同校はまた、卒業した後も就職支援サービスの提供を保証していたが、卒業生とのやりとりはどうやら打ち切られていたようだ。ほかにも、卒業生の給与水準の情報を改ざんし、入学希望者には高金利のローンを組むよう勧めていたと元従業員が証言している。

大学側による企ては、アイオワ州とマサチューセッツ州、そしてペンシルベニア州の検事当局が実施した調査によって発覚。当局は、アート・インスティテュートとEDMCを提訴し、その結果として学生ローンの返済が免除されることとなった。返済免除の発表に際してバイデン大統領は次のような声明を発表している。

「アート・インスティテュートは情報を改ざんし、故意に学生を欺き、卒業後のキャリア形成を保証しないまま多額の借金を負わせました。前任の大統領は、大学が学生や借主をだましているのを見て見ぬふりしてきましたが、私は借主が必要としていた救済を提供するため、この問題の解決に取り組むことを約束し、それを実現したのです」

教育省は対象者に通知を送り始めており、基準を満たす元学生にはこれまで支払った金額を返金するとも発表している。これにより、一人あたりおよそ1万9000ドル(約295万円)が支払われる予定だという。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい