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  • 2023.10.16

ARTnews JAPANラウンジもオープン! ACK 2023の見どころを一挙紹介

秋の京都を象徴するものは多数あるが、10月27日のVIPプレビューを皮切りに10月30日まで開催される「Art Collaboration Kyoto(以下ACK)もその一つとしての存在感を高めている。メディアパートナーを務めるARTnews JAPANの会員及びメルマガ購読者のためのスペシャル企画を含め、第3回となる今年の見どころを紹介しよう。

2022年のACKの様子。Photo: Nobutada Omote/ Courtesy of ACK

ACKは、日本と海外のギャラリー、官産民、美術業界と他の文化産業などが文字通り「コラボレーション」するユニークなプラットフォームとして、新型コロナウィルスのパンデミックまっただなかの2021年にスタートした。第3回となる今年は、リードパートナーを務める三菱地所やエディオンをはじめ、実に50を超える企業や団体が何らかの「パートナー」としてACKをサポートしており、その注目度や期待の高さが窺える。

ACKのメイン会場となるのは、市内の喧騒からほどよく離れた自然豊かな山間に建つ国立京都国際会館(京都駅から電車で約20分、車で約30分ほど)。前川國男や丹下健三といった戦後日本の建築界を代表する建築家たちが審査員を務めた公開コンペを勝ち抜いた大谷幸夫の設計によって、1966年に竣工した。「自然との応答」というコンセプトを掲げたこのダイナミックなモダニズム建築とその周辺環境も、ACKの独自性を補強する重要な存在だ。

そんな京都国際会館を舞台に開催される今年のACKのキュレトリアルテーマは、「Visions of a Torn World:循環と共存」。プログラムディレクターを務める山下有佳子は、「近年、芸術領域はますます多様化していますが、そこに優劣はなく、そのすべてに異なる価値があります。歴史的な風景が色濃く残る京都でも、伝統的な芸術だけでなく、新しい世代のアートや活動、国際的なアートフェアや芸術祭など、さまざまな文化が絶えず循環し、進化を続けています。そうした多様なものを視覚化し、これから先の未来を共に作り出すためのきっかけにACKがなることを願っています」と、テーマに込めた思いを語る。

ACKの特徴をもっとも体現する「ギャラリーコラボレーション」セクションでは、東京、京都、大阪、名古屋の国内4都市にまたがる26ギャラリーがホストとなり、NYやLA、パリ、ロンドンなどの欧米の主要都市だけでなく南米からはサンパウロとメキシコシティ、またAPACからはシドニー、香港、成都、釜山、ソウルなどを拠点に活動する27ギャラリーを招聘。京都にゆかりのあるアーティストを紹介する「キョウトミーティング」も加えると、合計64もの実に多様なギャラリーが、国際会館に集結することになる。

また同会場では、国内外の有識者たちが登壇するトークプログラムのACK Talksやキッズプログラムも開催される。さらにキュレトリアルテーマをもとにしたパブリックプログラムでは、「BEYOND GLITCH 壊れた世界で現実を捉え直す」をテーマに、ゲストキュレーターにグレッグ・ドボルザークを迎え、潘逸舟や川人綾、米谷健+ジュリア、山内祥太ほか10名のアーティストを紹介する。

リードパートナーのエディオンとのラファエル・ローゼンダールのインスタレーションや、「工芸の今」を紹介する「MUFG工芸プロジェクト」、UESHIMA COLLECTIONの抽象絵画の展示など、パートナー企業とのコラボレーション企画であるスペシャルプログラムも必見だ。

「アートの発信地・京都」に果たす役割

2022年ACKのサテライトプログラム「Flowers of Time」より、リー・ミンウェイ《水仙との百日》(1995-2022)Courtesy of LEE Studio and Perrotin Photo: Nobutada Omote/ Courtesy of ACK

京都は言わずもがな、京都芸術大学、京都市立芸術大学、京都美術工芸品大学といったアートスクールに加え、芸術学部/学科を擁する精華大学、同志社大学が拠点を構えるなど、アートを志す若者たちが多数集まる場所でもある。2023年3月には文化庁が京都に移転し、歴史的な文脈だけでなく現代美術においても、日本が「文化芸術立国」となることを目指す。共同ディレクターを務める深井厚志は、「千年をかけて培ってきた、美意識と創造性を重んじる」京都の風土を前提に、ACKが「アートの発信地・京都」に果たし得る役割をこう語る。

「近年、京都に移住するミッドキャリアのアーティストやキュレーターは少なくありません。街なかにはアーティストのアトリエも多く、至るところで大小様々な企画が行われています。そんな京都がもつ現代アートの潜在力を引き出し、質の高いアートフェアを核にしながら街全体を挙げた文化力とホスピタリティによって、世界中から芸術に対する審美眼を持つゲストを迎え、グローバルなアートシーンに接続することは、ACK立ち上げ時からのミッションです。ACKは、現代アートの発信地としての京都のブランディング向上に寄与しつつ、その先にある日本のアートシーン全体の発信力を高めていくことを常に意識しています。京都を知り、日本を知る。その入口としてACKが機能していると思っています」

この言葉の通り、京都ではACKに合わせて、メイン会場となる国際会館以外の様々な場所で多種多様なアートイベントが繰り広げられる。例えば、東福寺塔頭・光明院では、ACKのパートナー企業である株式会社SGCとのコラボレーションによる若手日本画家、丹波優太の個展「Golden Fight of Gods」(10月27-10月30日)、平安神宮尚美館(通常非公開)では株式会社ギーク・ピクチュアズによるCOIN PARKING DELIVERYの展示が開催されるほか、両足院では、公益財団法人現代芸術振興財団が主催するハロルド・アンカート個展「Bird Time」(10月29日−11月11日)、京都中央信用金庫 旧厚生センターと京都新聞ビル地下1階、そして国立京都国際会館では、故・坂本龍一や 高谷史郎、コーネリアスなどが参加する「AMBIENT KYOTO 2023」(10月6日−12月24日)など、京都という街の歴史や伝統とアートに限定されない様々な表現とのマッシュアップを目撃することができる。「ACKには、京都のクリエイティブ・コミュニティと、日本中、そしてグローバルなアート・コミュニティを繋ぐ役割があります。今年は、当初からACKが目指していた一つの型をついに実現できる段階に到達できそうです」と深井は語るが、それこそ「アートの発信地・京都」を代表するイベントの使命であり、ACKを通じて、多くの出会いと発見が京都市内各所で巻き起こるに違いない。

ARTnews JAPANのスペシャルプログラム

祇園のCasa Valextraの2Fに位置するサロンはACK期間中、ARTnews JAPANのラウンジとなり、ポメリーのシャンパーニュなどを味わいながら寛いだひとときを過ごすことができる。Photo: Courtesy of Valextra

さて、そんなACKのメディアパートナーを務めるARTnews JAPANは、会期中、京都・祇園に旗艦店の一つを構えるイタリアのラグジュアリーレザーブランド、VALEXTRAとタッグを組み、ARTnews JAPAN読者とACKのVIPに向け、同店舗2Fのサロンにて「ARTnews JAPAN VIPラウンジ at Casa Valextra」をオープンする。ここでは、多岐に渡りアートの発展に貢献してきたシャンパーニュブランド、ポメリーのシャンパーニュを楽しめる。同社の創業者、マダム・ポメリーは、世界で初めて辛口のシャンパーニュ、ブリュットを考案したことで知られ、ミレーの名画『落穂拾い』を匿名で購入し国に寄贈したという逸話も持つ。これからが期待される気鋭の才能の支援にも情熱を注いできたポメリーは、今回、京都を拠点にする若手アーティストを対象にPommery Prize Kyoto」も初開催し、一次選考で選ばれた3人の作品を展示する(会場は国立京都国際会館ニューホール)。

ほかにも、このVIPラウンジでは、US版ARTnewsの最新号とバックナンバーの閲覧や、京都国際会館とホテルBijuuで開催される大丸松坂屋の「ラダープロジェクト」にて新作を発表するスクリプカリウ落合安奈と玉山拓郎の2名の若手作家の作品も鑑賞できる。入場には、ARTnews JAPANの会員ページ、あるいは過去のメルマガの提出が必須となる。メルマガ購読がまだの方は、ぜひこの機会に登録しよう。

成長より成熟。独自の価値とコミュニティの醸成を狙う

日本だけを見てみても、今年7月に開催された「東京現代」に「アート大阪」、9月の「ART FAIR ASIA FUKUOKA」、10月の「MEET YOUR ART FESTIVAL」、そして来年3月の「アートフェア東京」など、多数のアートフェアが開催されている。そんなアートフェアが乱立する現在におけるACKは、何を「成功」の指標としているのか。もちろん、これまでの2回にわたっても、国内外のアートコレクターをはじめとする超富裕層による作品購入や観光、ACKのために集まるギャラリストやキュレーター、アーティスト、アートマネジャーといった文化感度の高い人々による文化スポットへの訪問によって、「京都に桁違いの経済効果をもたらしている」ことは言うまでもない。また、「グローバルなアートカレンダーにおけるACKのプレゼンス向上、地域コミュニティとの連携や文化/観光資源の活用、人材育成と持続可能性といった目標」もある。深井はこう続ける。

「ACKは、いたずらに拡大発展して規模の大きさや有名ギャラリーの出展ばかりを求めるのではなく、独自の価値やACKを軸としたコミュニティの醸成を目指したい。その意味で、成長というより、成熟を目指していく、といったほうが馴染むかもしれません」

Art Collaboration Kyoto 2023
会期:10月28日(土)~ 10月30日(月) * 内覧会は10月27日(金)
メイン会場:国立京都国際会館(京都府京都市左京区宝ヶ池)
時間:
10/28(土)12:00–19:00、10/29(日)11:00–19:00、10/30(月)11:00–17:00
* 最終入場は閉場の1時間前まで

ARTnews JAPAN VIPラウンジ at Casa Valextra
会期:10月28日(土)11:00–21:00、29日(日)11:00–19:00
会場:CASA VALEXTRA(京都市東山区祇園町南側 570-8)

2022年ACKのキッズプログラムより、アーティスト、宮永愛子によるワークショップの様子。Photo: Ai Nakagawa/ Courtesy of ACK
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