アメリカで8校を運営する美大ネットワークが突然閉校。コロナ禍で財政難と学生数の減少が加速
アメリカ国内に8校を擁する私立美術大学ネットワーク、アート・インスティテュートが突然閉鎖され、波紋を呼んでいる。
9月22日、アート・インスティテュートは、在学生にも事前の説明もなく、マイアミ、アトランタ、オースティン、ダラス、ヒューストン、サンアントニオ、タンパ、フロリダ、バージニアビーチの計8校を今月末で閉鎖すると発表した。
過去10年間、様々なオーナーがアート・インスティテュートの存続のため奮闘してきた。しかし、生徒数の減少と財政難から脱することはできず、近年になって状況はさらに悪化していた。
2017年から現在までに、アート・インスティテュートのオーナーは2度も変わっている。2019年からはデラウェア州の非営利団体、Education Principle Foundation(EPF)が所有していた。EPFでは今年8月、傘下に収めるジョージア州サバンナの大学がEPFから離れることが、両組織の理事会の投票により全会一致で決定している。
アート・インスティテュートは学生たちへ送信したEメールの中で、「過去10年間、キャンパス運営に関わる外部・内部両方の出来事が重なり、閉鎖を余儀なくされた」と説明している。
アート・インスティテュートのオーナー企業であったペンシルベニアのエデュケーション・マネジメント・コーポレーション(EDMC)では、2011年から2013年までの間に生徒数が16.3%も減少。2015年には、EDMCが所有する15校が閉校に追い込まれた上、詐欺と人材略奪の疑惑をめぐってアメリカ規制当局による法的異議申し立てを受けていた。
その後も、ファッションデザインから調理師まで、幅広い学位を提供していたアート・インスティテュートを取り巻く状況は悪化の一途をたどり、EDMCの親会社であるドリームセンター・エデュケーション・ホールディングス(DCEH)は2018年、同校の売却を決定。その前年、DCEHは、アート・インスティテュートのリクルーターが入学希望者に対し、同校が認定大学(公式機関による、教育機関の品質と信頼性を示す認定)であるという虚偽の宣伝を行なっていたとして集団訴訟を起こし、その後、両者は和解していた。
そして2019年、民間投資家グループによって設立された非営利団体EPFがアート・インスティテュートを買収したが、高等教育界の批評家たちはこの買収に懐疑的だった。特に、アート・インスティテュートの透明性や、新オーナー下での長期的な運営能力を疑問視する声が多かった。
現時点でアート・インスティテュート代表者からのコメントは得られていないが、同校は声明の中で、在学生が他の教育機関で学位が取得できるよう単位互換を模索中だと述べている。しかし、まだ見通しは立てていない。
アート・インスティテュートは学生に送ったEメールの中で、同ネットワークは「元オーナー企業の下で発生した諸問題に対処してきたが、コロナ禍のダメージから回復することができなかった」と述べている。
パンデミックによる財政難や入学者数の減少を理由に閉鎖に追い込まれた美術大学は、アート・インスティテュートだけではない。2020年には、アメリカで最も古い美術大学のひとつであるサンフランシスコ・アート・インスティテュートが閉校を発表し、今年、破産を申請している。