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財政難の米美大が有名校を「間借り」。短期間で修士号が取れるプログラムで閉校の危機回避を狙う

財政難によって閉校の危機に陥っているバーモント・カレッジ・オブ・ファイン・アーツ(VCFA)は、学生数を確保するためカリフォルニア芸術大学(カルアーツ)と提携することを発表した。カルアーツの講義室を使いながら手ごろな価格で修士号を取得できるこの取り組みは、2024年秋の新年度から始まるという。

カリフォルニア芸術大学のメイン校舎。Photo: Sctott Groller/Courtesy of CalArts

バーモント州モントピリアにキャンパスを構えるバーモント・カレッジ・オブ・ファイン・アーツ(VCFA)は、入学希望者の減少による閉校の危機に陥っている。その打開策としてVCFAは、ロサンゼルスのカリフォルニア芸術大学(CalArts=カルアーツ)と提携を結び、カルアーツのキャンパスでVCFAのカリキュラムを履修できる取り組みを2024年秋の新学期から開始するという。

対象となるVCFAのカリキュラムは、短期間の集中講義に参加することで修士号が授与される「ロー・レジデンシー・プログラム」で、文学、ビジュアルアート、グラフィックデザイン、作曲をはじめとする学位の取得が可能だ。同校は、この9日間のカリキュラムを毎年1月と夏に開講するが、モントピリアには、ビジュアルアートの授業を実施するために必要な施設がそろっていないため、これまでも全国の美術大学のスタジオを借りて授業を行ってきた。しかし今回のカリフォルニア芸術大学との協定によって、今後VCFAはモントピリアで運営を引き続き行いながら、カルアーツのキャンパス内に設けられた設備を利用できるようになる。

VCFAは声明のなかで、「私たちの仲間であり鏡像であると同時に潤沢な資金をもつ」カルアーツとの協力体制を「提携協定」と説明。また、より大きな組織に吸収される可能性を否定した上で、今後もニューイングランド高等教育委員会の認定、評議委員会、学長、カリキュラム、そして教授陣の独立性は保たれると強調した。同校の声明は、さらにこう続く。

「どのような分野であれ、大学院だけを運営する機関は非常に珍しい。芸術分野ではなおさらです。その上で、最高レベルの学習体験を提供するには資金が必要です。多様な人々に教育機会を提供することを誇りとする当校が、いかに高いアクセシビリティと利益を両立させることができるのか。これは非常に大きな課題です」

資金繰りに関しては、「新型コロナウイルス感染症の時期」に生じた財政難が長引き、教育機関の運営が「より困難になった」という。

高等教育機関に関する情報を扱うサイト「Inside Higher Ed」によると、ニューイングランド高等教育委員会は、6州にわたって200以上の高等教育機関を認定している。だが、その数はこの数十年で減少しており、127の学校が閉鎖や合併によって認定を失った。例えば、ニューハンプシャー・インスティテュート・オブ・アートはニューイングランド大学に2019年に吸収されている。他にも、アート・インスティテュート・ボストン(1998年にレスリー大学と合併)やスクール・オブ・ザ・ミュージアム・オブ・ファイン・アーツ(2016年にタフツ大学と合併)もその一例だ。

一方のカリフォルニア芸術大学は、新たな収入源を得ることとなる。同校は独立美術大学協会に含まれており、さらには西海岸大学協会から認定を受けている。(翻訳:編集部)

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