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文具メーカーがバンクシーを提訴! 「商標権を所有しているのに使っていないのは違法」と主張

商標登録されているにもかかわらず、バンクシーの名を冠したグッズや商品をアーティストが販売していないことから、商標権の不使用としてグリーティングカードを手がける会社がバンクシーを提訴した。

バンクシーが描いたネコの絵画。Photo: Getty Images
バンクシーが描いたネコの絵画。Photo: Getty Images

正体不明のストリートアーティスト、バンクシーは、グリーティングカードを作る会社から提訴されたことを受け、自身の名前を使う権利を失う可能性が浮上している。

バンクシーを提訴したのは、グリーティングカードを販売している企業、Full Colour Black。同社は、バンクシーの作品をはじめとするストリート・アートの画像をあしらったカードを販売しているが、オーナーのアンドリュー・ギャラガーは、バンクシーが商標権を所有しているにもかかわらずその商標を使用していないと主張。このためギャラガーは、「商標権不使用」を理由に、バンクシーとして登録された商標の取り消しを求めている。一方のバンクシー側は、自身の作品や商品を販売するために商標を使用していると反論している。

ギャラガーはバンクシーに対して名誉毀損の訴訟も起こしている。ことの発端は2024年2月、ファッションブランドのGUESSがバンクシーとのコラボレーションを装い作品を違法利用したとして、バンクシーが自身のインタスタグラム上で同ブランドを糾弾。その際に、フォロワーたちに同ブランドのロンドン・リージェント・ストリートにある店舗から商品を万引きするよう呼びかけたのだが(この投稿はのちに削除された)、ギャラガーはこれを、「バンクシーが窃盗を促した」と主張しているのだ。

今回の提訴についてタブロイド紙のザ・サンは、情報筋の話として、「バンクシーの弁護チームは人形のように立ち上がり、法廷でバンクシーの口の代わりとなることが予想される。バンクシーも傍聴席で裁判を聞く可能性があるが、彼の姿を知るものはいない」と報じた。

ペストコントロールは、バンクシーは2017〜2022年の間にオンラインストアで時計、マグカップ、Tシャツ、時計、ハンドバッグなど複数の商品を販売した実績があるとして、法廷で証明しようとしている。

バンクシーは確かに2019年、「Gross Domestic Product」という名のポップアップショップをオープンしたが、正式に一般公開されることはなかった。このポップアップでは、音楽フェスのグラストンベリーに出演したイギリス人ラッパー、ストームジーが着用した防弾チョッキをはじめとする商品が展示されていた。

バンクシーは以前から商業主義を批判しており、「著作権は敗者のためのシステム」とまで書いている。しかしペストコントロールのチームは、この考えは「アーティストが作った作品を誤用し、一般人に詐欺を働く自由」を与えるものではないと補足している。

ザ・サンはまた、バンクシーは登録商標を長年所有しているが一度も使用していないと報じており、こう続けている。

「誰もがバンクシーの名前を勝手に使っているような状況において、たとえバンクシー本人が『これは自分の作品だ』と言ったところで、それが本物であるとはもはや言えない。つまり、バンクシーという言葉はもはや商標として機能していない。彼はバンクシーという名前のもとで物を売ったことも、関連グッズを作ったこともないのだから」

さらにザ・サンは、前述の情報筋が「アーティストが商標権を所有することは、アート業界にとっても問題になり得る。ペストコントロールが不当な力をもってしまうからだ」と指摘しているとも報じている。

(翻訳:編集部)

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