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元バチカン職員をおとり捜査で逮捕。バロック美術の巨匠ベルニーニによる手稿の窃盗容疑

バチカンの検察当局は、バロック期を代表する彫刻家で建築家のジャン・ロレンツォ・ベルニーニの手稿をローマ教皇庁の文書庫から盗み、売却しようとした疑いで元職員を逮捕した。この手稿には、サン・ピエトロ大聖堂を象徴する大天蓋装飾の詳細が記されている。

イタリア・ローマ市内にあるバチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂(2024年6月2日撮影)。Photo: Lorenzo Di Cola/NurPhoto via Getty Images

イタリアのドマーニ紙が伝えた第一報によると、18ページにわたる手稿はバロック建築の巨匠として名高いベルニーニが17世紀に著したもの。この貴重な文書が消えたことを重く見たバチカン当局は、入念なおとり捜査を行った。

5月27日、容疑者はサン・ピエトロ大聖堂の管理責任者であるマウロ・ガンベッティと面会し、ベルニーニの手稿を売ろうとしたという。共犯者を伴ってやってきた容疑者は、文書と引き換えに12万ユーロ(約2000万円)の小切手をガンベッティから受け取ったところでバチカンの憲兵隊に逮捕された。

イタリアメディアの報道によると、サン・ピエトロ大聖堂管理局(ファブリカ・ディ・サン・ピエトロ)の文書庫から窃盗した手稿を売ろうとしたのは、美術史家のアルフィオ・マリア・ダニエレ・ペルゴリッツィとされている。管理局は大聖堂建設のために16世紀に設立された機関で、現在は大聖堂の修復を管轄している。ペルゴリッツィはこの管理局で、1995年から2011年までコミュニケーション部門の責任者を務めていた。

ロイター通信によると、現在ペルゴリッツィは恐喝未遂容疑でバチカンの刑務所に拘留されている。また、バチカンの公式メディアであるバチカン・ニュースは、ペルゴリッツィを起訴するかどうかはアレッサンドロ・ディディ検察官が近日中に決定すると報じている。(翻訳:石井佳子)

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