勃興する「アート×ホスピタリティ」ビジネス。NYのサザビーズ新社屋に高級レストランがオープン予定
ニューヨークの「エース・ホテル」やレストラン「ラ・メルスリー」を手がけた世界的デザインスタジオ「ローマン&ウィリアムス」は、オークションハウスのサザビーズが新社屋を設置予定のニューヨークのビル内に高級レストランをオープンすることを発表した。

世界的デザインスタジオ「ローマン&ウィリアムズ」とサザビーズがタッグを組み、ニューヨークのアッパー・イーストサイドにあるサザビーズ新社屋のブロイヤービル内に高級レストランをオープンすることが明らかになった。
ローマン&ウィリアムズはロビン・スタンデファーとスティーブン・アレシュ夫妻が2002年に設立したデザインスタジオで、これまでニューヨークの「エースホテル」や「ヴィセロイ」など、注目のホテルやレストランの内装を手掛けてきた。日本では2018年に「青山ビルヂング」のリニューアルを担当している。
彼らの仕事の中でもよく知られているのは、2018年にソーホーにオープンしたフレンチレストラン「ラ・メルスリー」だろう。エレガントな空間と活気漲るオープンキッチン、そしてその完璧なフランス料理で、2023年にはニューヨーク・タイムズのベストレストラン100選、24年にはミシュランガイドの「ニューヨークで注目されるベストレストラン7選」の1つに選ばれた。
サザビーズが新社屋を構えるブロイヤービルは、ブルータリズムの建築家マルセル・ブロイヤーが1966年に設計した元ホイットニー美術館で、2014年まで使われていた。その後2015年から20年までメトロポリタン美術館が別館「メット・ブロイヤー」を置き、21年から24年8月まで、改装中だったフリック・コレクションが仮の展示室として使用していた。2023年、サザビーズは同ビルを新本社とすることを発表し、その後、アブダビの政府系ファンドADQとの10億ドル(約1513億円)の投資契約を締結。2024年末に、このビルを1億ドル(約151億円)で正式に購入した。
新社屋の改装にはヘルツォーク&ド・ムーロンを起用し、移転オープンは2025年秋を予定している。サザビーズは、新社屋に最新式のギャラリーや、展示スペース、オークションルームを設ける予定で、「内部スペースを慎重に検討し、建物を象徴するロビーなどの主要な要素は維持する」計画だという。ギャラリーは無料で一般公開される。
今回、ローマン&ウィリアムズが仕掛ける新レストランは、かつてメット・ブロイヤー美術館時代に話題のシェフ、イグナシオ・マットスが手がけた「フローラ・バー」があった場所に入る見込みだ。これは、近年活発化しつつある「アートとホスピタリティの融合」の潮流における新事例になるだろう。2017年、メガギャラリーのハウザー&ワースはロサンゼルスの街中に農場を再現し養鶏するレストラン「マヌエラ」をオープン。2024年には、ソーホーにアートを楽しめる同名の高級レストランを開いた。現在はアートファーム・グループの名のもとで世界に12カ所ほどのホスピタリティプロジェクトを展開するまでに成長している。(翻訳:編集部)
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