ARTnewsJAPAN

ゴッホ《ひまわり》にスープをかけた活動家に禁固刑。「国は気候変動対策に無関心」と弁護側

環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル」に所属する二名の活動家に対して禁固刑がこのほど言い渡された。二人は2022年10月にゴッホの《ひまわりに》にトマトスープかけており、器物損壊罪の有罪判決が下されたが、弁護側は控訴する意思を示している。

2022年10月14日、ロンドン・ナショナル・ギャラリーで抗議活動を行うフィービー・プラマー(奥)と、アンナ・ホーランド(手前)。Photo: Courtesy of National Gallery

フィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》にトマトスープを投げつけた二人の活動家に対し、有罪判決が言い渡された。

環境活動団体「ジャスト・ストップ・オイル」に所属するフィービー・プラマーとアンナ・ホランドは2022年10月、ロンドン・ナショナル・ギャラリーに展示されている《ひまわり》にスープを投げつけた後、自分たちの手に接着剤を塗布して壁に貼り付けた。

BBCニュースによると、サザーク刑事法院のクリストファー・ヘヒア裁判官はプラマーとホランドに対し、「世界で最も価値のある美術品のひとつを、あと少しで破壊するところだった。刑務所に入るまでに、心と身の回りの準備をしておくように」と告げ、器物損壊罪の罪で禁固刑を言い渡したという。

検察側はまた、17世紀にイタリアで作られた「アンティークの額縁そのものが芸術品」であり、つや消しが施された額縁の表面に付いた傷は、活動家によってつけられたものだと語っている

今回の判決に付された保釈条件には、プラマーとホランドが美術館や博物館を訪れないこと、公共の場で接着剤やペンキなどの粘着性物質を持ち歩かないことなどが含められている。

二人の活動家の判決は、9月27日に確定する見通しだ。

一方で、ホランドの弁護を担当したケイティ・マクファデンは判決を「とても不満に思っており」、控訴を検討しているとBBCニュースに語っている。

「政府は気候変動対策に興味がないことを示し続けてきました」とマクファデンは話す。「一方で、自分や子どもの未来のために戦う若者の基礎に時間とお金を投じることには興味があるようです。ホランドとプラマーが証拠を提出する際に課せられた制限のせいで、二人は抗議活動に至った動機を十分に説明できませんでした。その事実に、われわれは失望しています」

プラマーはSNS上で数百万回再生された動画において抗議の理由を語っている。動画内でプラマーは、イギリスの元首相であるリズ・トラスが大量の化石燃料の採掘権をエネルギー企業に付与しようとしたこと、洋上風力発電のコストの方がはるかに低いと報告されているにもかかわらず、再生可能エネルギーと比較して化石燃料が受けている補助金を多く提供していることなどを訴えており、さらにはエネルギーコストへの懸念が高まっているイギリスの生活費の危機との関連といった問題に人々の注意を向けるために抗議活動を実施していると話していた。

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは当初、ゴッホの絵に傷はなかったものの額縁に 「軽微な損傷 」があったと発表しており、《ひまわり》は抗議活動の二日後に再び展示された。(翻訳:編集部)

from ARTnews

あわせて読みたい