ウォーホルによるデジタル作品10点が入ったディスクがオークションへ。うち1点はブロンディのボーカル、デボラ・ハリーの肖像画
アンディ・ウォーホルがPC黎明期を築いたメーカー、コモドールのAmiga1000を使って作成したデボラ・ハリーの肖像画が発見された。この肖像画を含む10点のウォーホルによるデジタル作品が入ったディスクがオークションに出品されるという。
ニューヨーク・ポスト紙が報じたところによると、アンディ・ウォーホルが初期のホームコンピューター「Amiga1000」で制作したというブロンディのボーカル、デボラ・ハリーの肖像画がデラウェア州郊外で発見された。この肖像画は、かつて存在したPCメーカーのコモドールのブランド・アンバサダーをウォーホルが務めていた頃、ニューヨークのリンカーン・センターで行われたプロモーションの一環として制作されたもの。これを含むウォーホルによるデジタル作品10点が、サイン入りディスクに格納されているという。
確かにハリーは、2019年に出版された回顧録『Face It』の中で彼女の肖像画が制作された経緯をこう振り返っている。
「リンカーン・センターでコモドールAmigaのプロモーションとして、ライブで制作するポートレートのモデルになってほしいと、アンディ(・ウォーホル)から電話があった。イベント自体も面白いものだったと記憶している」
そしてハリーはこう続けている。
「会場にはオーケストラと大きなボードが用意されていて、白衣を着た技術者たちが大勢いた。アンディが私の肖像画をデザインし、技術者たちは色をアンディが描いた通りにすべてプログラムした。イベントの当日、私はカメラに向かって一つ芝居を打つことに。アンディの方を向き、手を髪に通しながらマリリン(・モンロー)の声を真似て『私を描く準備はできた?』と聞いてみた。アンディはコモドールが雇った司会者と話していたが、いつものように感情をあらわにしておらず愉快だった」
ハリーはまた、「制作されたウォーホル作品は二つしか存在しないと思う。そのうちの一つは私が持っている」と記している。
このほど所在が明らかになった肖像画は、コモドールの技術者として働いていたジェフ・ブリュエットの自宅に40年近く飾られていたようだ。
エンタメメディアのPage Sixが7月29日に報じたところによると、このサイン入りディスクには、ハリーの肖像画と、ウォーホルが雑誌『Amiga World』のインタビュー企画で制作した8枚の画像、そしてMTVで放送されていた番組『Andy Warhol's Fifteen Minutes』の制作中に描かれた実験的な画像が格納されているという。ブリュエットはこのディスクの販売を計画しているといい、同メディアの取材に対して次のように語っている。
「この作品をウォーホルに作ってもらってから40年ほど経っていますが、彼と一緒にものを作り出したことで大きく人生が変わりました。私の壁にかかっているデビーの肖像画を見たり、私がアンディと仕事をしたことを聞いた人たちは皆、とても興奮します。NFTやデジタルアートが爆発的に普及してからは特にそうです。私はこの素晴らしい作品が、人の目に触れる時が訪れたのだと思い、手放すことにしました。この作品を売りに出すことで、作品を本当に求めている人の元へ届くことを願っています。そして、老後をもう少し快適に過ごせるようにしたいのが正直なところです」
ハリーの肖像画を含むディスクの価格はまだ公表されていないが、ニューヨーク・ポスト紙は「数百万ドル(数億円)で売れる可能性がある」と推測している。事実、2014年に旧式のフロッピーディスクから復元したAmigaの画像を使用して作られた5枚のNFTシリーズは、2021年にクリスティーズのオークションで338万ドル(現在の為替で約5億654万円)の値がついた。
ハリーの作品に加え、ウォーホルはキャンベル・スープの缶や花、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』(1485-86年)のコピーのデジタル画像も制作している。当時、彼は『Amiga World』誌にこれらの画像を配布するつもりだと語っていたが、実現することはなかった。(翻訳:編集部)
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