古代ペルーの遺跡でカラフルな壁画に彩られた「女王の間」を発見!
コロンビア大学をはじめとする発掘調査チームが、ペルー・パナマルカのモチェ文化時代の遺跡から、7世紀頃にモチェ族の女性の指導者が使っていたと思われる玉座の間を発見した。
考古学者たちが、ペルーのアンカシュ地方にあるパナマルカのモチェ文化時代の遺跡で、女性の指導者が使っていたと思われる王座の間を発見したとアートネットが伝えた。ペルー北部沿岸に暮らしていた民族、モチェ族によるモチェ文化時代は、紀元前後から700年頃という説と、紀元前350年頃から850年頃までという説がある。同時代、パナマルカは政治と宗教の中心地として栄えた場所で、 発見された玉座は7世紀に作られたと考えられる。
考古学者が王座の間を調査したところ、壁面には、女性たちが糸を紡いで機織りをする工房や、女性統治者の冠を運ぶ男性たちの行列、海の生き物を描いたカラフルな絵画で埋め尽くされていた。そして玉座の周囲には、王冠をつけた女性が杯を掲げ、玉座に座った女性が鳥と人間が混ざったような怪物に話しかける場面が描かれていた。さらに玉座を調べたところ、背もたれが擦り切れており、緑色の石のビーズや細い糸、人間の髪の毛が発見され、玉座が日常的に使用されていたことも明らかになった。
コロンビア大学の美術史・考古学の准教授で、この遺跡の調査チームのメンバーであるリサ・トリバーは、これらの壁画について、「壁に女性のイメージが繰り返し描かれていること、そして、彩色された玉座のすぐ隣に、同じように彩色された玉座に座っている女性のイメージが描かれていることなどから、玉座はかつて実在の女性、あるいは7世紀にパニマルカで権力を握っていた女性の一族が座っていた可能性を示唆しています」と推測する。そしてトリバーは「古代モチェ社会や、それに続くペルー北部の王朝では、女性指導者は珍しい存在ではありませんでした」と続けた。
トリバーは、これまで古代のペルーに女性の指導者がいたという事実が十分に認識されてこなかった理由について、いくつかの要因を挙げて説明している。その中には、16世紀から19世紀にかけてのスペイン植民地時代の歴史が男性の系譜のみを強調していること、また家父長制の考え方がペルーだけでなく考古学にも影響を与え続けていたことがある。
また、今回の調査では、戦士、武器、怪物などの壁画があるホールも見つかった。柱に、人間と蛇が絡み合う特徴的な絵画があることから「編み蛇の記念碑的ホール」と名付けられたこのホールは、広場の上に位置しており、劇場や競技場のボックス席のような空間であったと考古学者たちは考えている。
今年発掘された2つのホールは、モチェ文明において他に類を見ないものであり、この遺跡では今後も多くの発見が期待されている。トリバーは、「ペルーの7世紀から8世紀にかけての時代は、芸術と建築において非常に優れた成果がもたらされた時期でした。今回見つかった2部屋は、その一部を教えてくれました」と話す。