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古代ローマ時代のディルド? 30年前に発掘された男根型木彫に新説

ある考古学者が1992年にイングランドで発見した木製の男根型オブジェは、2000年前のディルド(男根をかたどった性的な玩具)である説が発表された。説が確かであれば、古代ローマ時代の出土品で初めての例となる。

ヴィンドランダ美術館に展示されている、男根のオブジェ。Photo: Courtesy Newcastle University,England

ローマ帝国が支配していたイングランドのノーサンバーランド州のヴィンドランダ・ローマ要塞で1992年に発見された当時、このオブジェは裁縫の道具として紹介された。しかし今年2月20日、学術誌『Antiquity』で発表された論文の中で、このオブジェについての新説が唱えられ、再検討が始まっている。

このオブジェはローマ帝国時代の靴や雑貨、革や鹿の角などの工芸品の廃品と一緒に溝の中から発見された。長さは6インチ(約15センチ)だが、素材が木材のため収縮したり反ったりしており、当時はもっと大きかったと思われる。木製のものはめったに現存しないため、とても貴重な史料として扱われている。

古代ローマのモザイク画やフレスコ画、陶器、彫像、ペンダントヘッドなどには男根のモチーフがしばしば登場する。専門家によると、それらは神の陰茎をモチーフにしたものと考えられ、男性的な活力を呼び起こし、幸運と保護をもたらすとされていたという。

このオブジェをめぐって、イギリスのニューカッスル大学とアイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリンの研究者による検証の結果、新たに3つの説が唱えられた。1つ目は、性具やディルドとして使われた可能性。もしこれが事実なら、ローマ帝国時代の発掘品として初の発見となる。ディルドはギリシャ・ローマの美術品に描かれているが、実物が発見された例はない。

もう1つは、食品や化粧品、薬品をすりつぶすための乳棒として使われていたという説だ。現代の一般的な乳棒とほぼ同じ大きさで、その形状から食材に魔力が宿ると考えられたのだろう。

3つ目は、像の中にはめ込まれたこのオブジェを触ることで、幸運や災難から身を守ることができたというもの。しかし、この種の像は通常屋外に置かれていたのに対して、この男根が外に長時間さらされた形跡はなかったという研究結果が出ている。

昨年、スペインで最大級の男根の浮き彫りが発掘された。今回の説により、各機関で発掘品の見直しが行われることが期待されるが、現時点では、この作品はまだヴィンドランダ美術館に展示されている。(翻訳:編集部)

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