特殊効果の巨匠による「E.T.」オリジナルモデルがオークションに! その他「目」やスケッチも出品

1982年公開の名作映画『E.T.』の宇宙人のオリジナルモデルが、4月3日まで開催されるサザビーズオークションに出品されている。予想落札価格は60万ドルから90万ドル(約9000万円~1億3500万円)。

映画『E.T.』の一場面。Photo: Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

スティーブン・スピルバーグ監督の1982年の代表作『E.T.』に使用された、宇宙人「E.T.」のオリジナルモデルが、4月3日まで開催される20世紀の映画小道具や衣装、ポスターなどを集めたサザビーズオークション「There Are Such Things」に出品されているアートネットが伝えた。

このモデルはアルミニウムフレーム、ラテックス、発泡体で作られており、サイズは幅43.2×高さ91.4×奥行き30.5センチ。1981年に特殊効果の巨匠カルロ・ランバルディによってデザインおよび製作されたもので、作中のクローゼットいっぱいのぬいぐるみに紛れ込むシーンで使用された。

ランバルディとスピルバーグは『未知との遭遇』(1977)以来の仲で、本作では、宇宙人「E.T.」の外観をストーリーボード・アーティスト(監督の作品イメージをビジュアルで体現する職業)のエド・ヴェローと組んで生み出した。だが脚本は、E.T.の外見的な特徴をあえて記述しないようにされており、ランバルディはスピルバーグが提供した参考画像とイメージのみで進めなければならなかった。その作業について、スピルバーグは後日こう振り返っている。

「私はカルロに言ったのを覚えています。『ここにアルバート・アインシュタイン、アーネスト・ヘミングウェイ、カール・サンドバーグの写真がある。どうすれば、この3人の象徴のような目と同じくらい、E.T.の目をしわくちゃで、悲しげに表現できるだろうか?』と」

サザビーズのオークションに出品中の「E.T.」オリジナルモデル。Photo: courtesy of Sotheby’s.

こうして作り上げたデザインをもとに、ランバルディは3カ月間、毎日20時間近くもスタジオに籠って3つの胴体と4つの頭部を製作した。ボディはスタント俳優が着用し、頭部は機械仕掛けとなっており、アニマトロニクスを操る人形遣いによって眉間から鼻のしわまで、150もの異なる動きをさせることが可能だった。モデル製作費は150万ドル(現在の為替で約2億2600万円)にのぼったという。

映画『E.T.』は公開後、アメリカ国内でおよそ3億ドル(現在の為替で約451億円)という当時の映画史上最大の興行収入を記録する。翌年の第55回アカデミー賞では視覚効果賞(ランバルディと彼の同僚が受賞)を含む4つの賞を受賞。その後1993年の『ジュラシック・パーク』に抜かれるまで世界歴代興行収入1位の記録を守り続けた。ランバルディは1980年代後半に映画制作から引退し、2012年に亡くなった。今回のオリジナルモデルは、彼の遺品となる。

サザビーズの科学・自然史部門副会長であるカサンドラ・ハットンは、出品作品について、「カルロ・ランバルディの天才性は、映画制作におけるアニマトロニクスと特殊効果を定義し、映画史上最も忘れがたいキャラクターたちに命を吹き込みました。このモデルは、CGが普及する前の時代の芸術性を体現しており、物語そのものと同じくらい魅力的で、ノスタルジックで象徴的なハリウッドの歴史の一部なのです」と評した。

このモデルの予想落札価格は60万ドルから90万ドル(約9000万円~1億3500万円)。オークションではそれ以外にも、アニマトロニクスで作られた研究用の「E.T.の目」やE.T.の表情研究のためのスケッチがそれぞれ予想落札価格1万2000ドル~1万8000ドル(約180万円~271万円)で出品されるなど、見逃せないランバルディの希少作品が揃っている。Artnet Price Databaseによると、2023年にランバルディによるE.T.のスケッチ画が3633ドル(現在の為替で約54万円)で落札されているが、彼のメカトロニクスのE.T.モデルは2022年に250万ドル(同・約3億7700万円)という驚異的な金額で落札された。今回の出品モデルはメカは付いていないものの、生みの親が最後まで手放さなかったモデル。高額落札が期待出来そうだ。

あわせて読みたい