先史時代の石像が365万円で落札されるも、考古学者は「稚拙な模倣品」と真正性を否定

青銅器時代にフランス領コルシカ島で作られたとされる石像が約365万円で落札された。しかし、フランス文化省の考古学者によれば、この石像が発見されたという記録は残されておらず、その「稚拙なつくり」からも「偽物であると断言できる」と主張した。

先史時代に作られたとしてオークションに出品された石像。Photo: Courtesy of Lyon & Turnbull
青銅器時代に作られたとしてオークションに出品された石像。Photo: Courtesy of Lyon & Turnbull

リヨン&ターンブルがロンドンで開催したオークションで、コルシカ島の遺跡から発見されたと思われる青銅器時代の石像が2万2500ユーロ(約365万円)で落札された。しかし、フランスの文化省はこれが偽物である可能性があると発表した。

スペイン人のディーラーが出品した高さ63センチメートルほどの像は、紀元前3000年紀の終盤に作られたと考えられる。オークションハウスはこの像を、コルシカ島南部にあるフィリトサ遺跡で発見された石碑を彷彿とさせると説明していた。ところが、コルシカ島の文化遺産当局が地元紙のコルス・マタン紙に寄せた声明によれば、この石像は「偽物であると断言できる」という。また、考古学者でかつてコルシカ島の文化省を率いていたフランク・レアンドリは、アート・ニュースペーパーに対してこう語った

「リヨン&ターンブルが掲載した写真を見ただけで、この石像が粗末な模倣品であると判断できます。この像はあまりにも小さく、コルシカ島にある像とは大きさが明らかに違います。また、顔のつくりもかなり稚拙で、目の形からもこれが最近作られたものであると判断できます。これほど不格好な模倣品がオークションに出品されたことに、驚きを隠せません」

また、コルシカ島に拠点を置く考古学者、レティシア・デュドンは、オークション出品前にリヨン&ターンブルから何の相談もなかったといい、保護されているはずのコルシカの文化遺産が海外オークションに出品されていることを地元住民から知らされたという。デュドンは、誰かを欺くために作った贋作なのか、アーティストやアマチュア彫刻家が趣味の一環として作ったものなのかは定かではないと言う。

そんななか、リヨン&ターンブルの広報担当者は、出品した像の来歴を裏付ける報告書を参照した結果、真正性と制作された年代に誤りはないと主張。また、オークションハウスは国際美術商連盟(IADAA)の証明書を有しているとしているが、同連盟の担当者は、この書類はインターポールの盗難美術品データベースと照合しただけで、真贋鑑定が行われたことにはならないと語っている。

これ以外にも、像の起源に関する情報は記載されておらず、考古学者のデュドンも、研究チームの記録にこの像が発見された事実は記されていないと述べている。また、仮に本物だったとしても、「盗難被害に遭い、コルシカ島から盗み出された」可能性が高いと指摘している。

現在までにコルシカ島で発見された先史時代の巨石は約800基に上る。そのうち約100基は顎が突き出ており、眉と鼻が「T」字型に形成された人間の顔を模した立石だ。立石の歴史的な機能については議論の余地があるが、レアンドリは、「土地や天然資源を手に入れた軍事的エリートを称えるために作られた」と推測している。

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