「サウジアラビアはルネサンスの真っ只中にある」──サザビーズが2025年、同国初のイブニングセールを開催
サザビーズは11月7日、2025年2月8日にサウジアラビアで史上初となるイブニングセールを開催すると発表。同時期に首都リヤドに拠点を構えることも明らかになった。
11月7日、サザビーズは2025年2月8日にサウジアラビアでは初となるイブニングセールを開催すると発表した。セールは2部構成。首都リヤド郊外にある、かつてサウジアラビア王室サウード家の本拠地だった世界遺産の街ディルイーヤで行うが、詳細な場所は明らかになっていない。
「オリジンズ」と題されたイブニングセールでは、サウジアラビア在住で世界的に高い評価を受けるアーティスト、アハメド・マターの「イルミネーション」シリーズの2部作をはじめ、国際的なアーティストと地元作家による作品が出品される。そのほか、イスラム教関連の品やジュエリー、時計、車、スポーツ関連のコレクターアイテム、ハンドバッグなどがラインナップに並ぶ。サザビーズのセール部門責任者で現代美術専門家のアシュカン・バゲスタニは、このセールについて「当社が誇るカテゴリー横断的な精神を体現するものとなるでしょう」と胸を張る。
サザビーズとサウジアラビアの関わりはこれが初めてではない。2013年には同国でハイライト展示会を主催し、2017年にはチャリティオークションを開催している。
サザビーズの中東・インド部門の会長エドワード・ギブスは、US版ARTnewsの取材に対し、「現在この国は文化的なルネサンスの真っ只中にあると言っても過言ではないでしょう。創造性はサウジアラビアの未来の要です」と同国の将来性を高く評価した。そしてこう続けた。
「(サウジアラビアで)これまで私たちが目にしたものは、全て非常に印象的なものでした。今年春に行われたディリヤ現代美術ビエンナーレ期間中に私たちの教育プログラムに参加くださった方々の圧倒的な熱意、あるいは、長年にわたってサウジアラビアで巡回展示を行ってきた際の反応など、全てが素晴らしいものでした」
「サウジアラビアに恒久的な拠点を持つことは、現地の既存の顧客に提供できるサービスを拡大するだけでなく、当社を知らない大勢の人々にアプローチできる画期的な出来事となるでしょう。サウジは現在、経済、社会、文化の多様性を目的とした政府プログラム『ビジョン2030』が進行中で、美術館やアートコミュニティが地域全体に拡大しています。私たちもこれに歩調を合わせ、多くのことを探求し、発展させていく必要があります。また、このオークションを通じて、多くのお客様がサウジアラビアを訪れることを期待しています。そして、彼らもまた、現地での体験に感動するだろうと確信しています」
サザビーズの「オリジンズ」開催は、同社がサウジの首都リヤドのアル・ファイサリア・タワーにオフィスをオープンさせる時期と重なる。このビルはノーマン・フォスターが設計を手掛け、同国初の超高層ビルとして知られている。これには、先週同社がアブダビを拠点とする政府系ファンドADQから、最終的に10億ドル(約1500億円)の投資を受ける契約が締結されたことが大きく関係しているだろう。この契約により、負債を抱えている同社の事業存続の一助となったことは言うまでもない。
サザビーズの最高経営責任者チャールズ・スチュワートは、同社を美術品業界を超えた世界的に認知された高級ブランドへと進化させる野心を抱いており、リヤドの拠点開設には期待を込めている。スチュワートは声明で次のように語った。
「サウジアラビアの文化は今、非常にダイナミックな時期を迎えています。サザビーズは数年前からサウジアラビアで積極的に活動しており、文化シーンの活況を目の当たりにしてきました。リヤドに拠点を置くことで、私たちは同国の芸術的環境の充実を支援し、サウジアラビアの若手アーティストを力づけることができるでしょう」
「オリジンズ」の品々はオークションに先立ち、2025年2月1日から8日までディルイーヤで公開展示される。
今回のサウジアラビア拠点に見られるように、サザビーズは近年拡大の姿勢を続けている。2024年7月には香港のランドマーク、チャータービルにアジアにおける新たなフラッグシップ拠点「サザビーズ・メゾン」をオープン。敷地面積は約2230平方メートルにおよび、2つの展覧会スペースが設けられた。
そして10月には、パリのマティニョン・サントノレ地区に新しいパリ本社をオープンさせた。2019年以降、パリではガゴシアンやホワイトキューブなど大手ギャラリーの拠点開設が相次いでいる。サザビーズ・フランスのマリオ・タベラ社長は、この動きはパリがアート市場の中心地として成長中であることを反映していると話す。(翻訳:編集部)
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