ARTnewsJAPAN

ロッカクアヤコら“ウルトラコンテンポラリー”の若手作家が香港のフィリップスで高額落札。注目を集める

6月21日、大手オークションハウスのフィリップスは、香港で開催した近現代アートのイブニングセールで2700万ドルを売り上げた。中でも注目されたのが、ルーシー・ブル、トレイ・アブデラ、ロッカクアヤコの作品で、いずれも予想を大きく上回る高値で落札されている。

トレイ・アブデラ《Some Things Aren't Worth Waiting For(待つだけの価値がないものもある)》(2019) Courtesy of Phillips

香港のフィリップスによるオークションでは、若い現代アーティストの作品に投機目的の買い手が群がる傾向があるが、今回も例に漏れず需要は旺盛だった。また、ジョージ・コンド、李禹煥(リ・ウーファン)、ピエール・スーラージュといった有名アーティストの作品も、100万ドルを超える高値で落札されている。

ブルとアブデラは、今回アジアでのオークションに初登場した数少ない若手アーティストだが、香港のオークションにデビューするアーティストは、常に入札者の注目を集める。オークション終了後の声明で、フィリップス香港のイゾール・ド・ビール・カステルは、これらの若手作家を「ウルトラコンテンポラリー(超現代的)」と評し、「新世代」のアーティストにスポットを当てることが狙いだったと述べた。

32歳のルーシー・ブルは、マックス・エルンストやハワード・ホジキンと比較されることの多いアーティストだ。今回、横に細長いカンバスに描かれた鮮やかな抽象画《8:50》がアジアのコレクターから出品され、ブルの作品としては過去最高の1140万香港ドル(150万ドル)で落札。これは、予想最高額150万香港ドル(19万2000ドル)の7倍を超える結果だ。

ルーシー・ブル《8:50》(2020) Courtesy of Phillips.

ブルは、2021年に開かれたデビッド・コルダンスキーでの個展で一気に注目されるようになった。それ以前にも、フランスのアルルと、ロサンゼルスで個展が行われ、大型絵画がコレクターの関心を集めている。オークションに初登場したのは22年5月と、まだ最近のことだ。この時はニューヨークのサザビーズで《Special Guest(特別ゲスト)》(2019)が最低予想落札価格6万ドルの15倍にあたる90万7200米ドルで落札された。

ブル同様、最高落札記録を更新したのが、トレイ・アブデラの絵画作品だ。ぼやけたオフィスの風景を背景に、マンガのようなはげ頭の男が自分の目をえぐり出している《Some Things Aren't Worth Waiting For(待つだけの価値がないものもある)》(2019)の落札価格は、260万香港ドル(33万7100ドル)。

アブデラは、2020年にベルリンのケーニッヒ・ギャラリーで初の個展を開催し、21年にはケーニッヒのソウルのギャラリーへ巡回した。現在は北京のX美術館で、彼にとってアジア初となる個展が開催されている(会期は7月17日まで)。

やはり予想を超える記録的な高値で落札されたのが、日本人アーティスト、ロッカクアヤコの《Untitled(無題)》(2019)だ。ピンクの色調で埋め尽くされたカンバスに、ロッカク作品の特徴である目の大きな「カワイイ」少女像がフィンガーペインティングで描かれている。

この作品は、制作された2019年にオランダのヤン・ファン・デル・トフト美術館で展示されたのが追い風となり、今回のオークションでは最低予想額の約4倍の810万香港ドル(100万ドル)で落札された。(翻訳:清水玲奈)

※本記事は、米国版ARTnewsに2022年6月22日に掲載されました。元記事はこちら

あわせて読みたい