4000年前から女性たちは頭部に紐をかけて荷物を運んでいた! スーダンの古代墓地と壁画の調査で判明

スペインの研究チームがスーダンの約4000年前の墓地に埋葬された遺骨を調べたところ、女性たちは貧富の差に限らず頭部に紐をかけて重い荷物を運んでいたことが分かった。

ラムセス2世による遠征を描いたレリーフの石膏型。ヌビアの女性が、頭に紐をかけて籠で子どもを運んでいるのが見える。Photo: Wikimedia Commons

スペインの研究チームは、スーダン・ヌビアにあるクシュ王国の領地であった青銅器時代の墓地に埋葬されていた30人(女性14人、男性16人)の遺骨を分析した。その結果、女性は男性の骨よりも頭部や首の部分の摩耗が激しい傾向にあることが分かり、女性が頭部に紐をかけて重い荷物や子どもを運んでいたことが判明。『人類考古学ジャーナル』3月号に発表したとLIVE SCIENCEが伝えた。

研究チームは、この発見を伝える声明で、「女性は、額から背中上部にかけて長時間負荷を加えられたことにより、頸椎と頭蓋骨の部分に特有の退行性変化を示していました」と伝えている。墓地はクシュ王国の首都カルマから北に約10キロメートルの距離にあった。そのことから研究者は、「カルマは人口密度の高い都市中心部であり、貯蔵庫、儀式用の建造物、醸造所、パン屋、防御壁など、さまざまな施設を備えていました。カルマとその周辺地域の女性たちは、頭から下げた紐で重い荷物や幼児を運び、大都市を生き抜いていたのでしょう」と分析する。

頭に紐をかけて荷物を運ぶネパールの女性たち。現在もこの運搬法は世界中に残っている。Photo: Jon G. Fuller/VW Pics/Universal Images Group via Getty Images

また、興味深い発見もあった。調査した墓の中に、死亡時に50歳前後であった富裕層の女性の墓もあったが、彼女もまた頭部に紐の使用を示す「最も明白な兆候」が見られたという。当時は高貴な身分であってもなお、重い荷物を運ばなければならなかったのだ。

研究者たちは裏付けとして、この時期に生きたヌビア人が描かれたエジプトの古代美術品も分析した。 その結果、壁画に描かれたヌビア人の一部が、頭部に紐を装着して子供を抱えているように見えることを発見。「額の紐は籠に取り付けられ、頭頂部にかぶせるように装着されていたと思われます。これは、第18王朝時代のテーベの墓の貢ぎ物の場面で描かれたさまざまなヌビアの女性像によって裏付けられています」と、研究チームは論文に記している。

頭に紐をかけて荷物を運ぶ手法は頭上運搬と呼ばれており、研究によると、頭に載せるものの重さが体重の20%までであれば、通常の歩行時に消費する以上のエネルギーを費やさずに運搬できるという。研究チームは声明の中で、「この運搬法は今日でもアフリカ、アジア、ラテンアメリカの農村地域で生き続けています」と述べている。

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