今週末に見たいアートイベントTOP5: 88歳、横尾忠則の現在地、新しいアートブックフェアが初開催!
関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

1. ジャネット・カーディフ:40声のモテット(原美術館 ARC)
磯崎新建築で「伝説のインスタレーション」が実現
カナダのアーティスト、ジャネット・カーディフによるサウンドインスタレーション、《40声のモテット》を展示する。同作は16世紀イングランド王国の作曲家、トマス・タリスが作曲した多声楽曲「Spem in Alium」をもとに制作されており、同曲を歌う40人の声が楕円形に配された40台のスピーカーから別々に再生される。2001年の発表以来、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめ世界各地で展示されてきた。
同作が披露されるのはギャラリーA。磯崎新が設計した、杉柱4本に支えられた高さ12メートルの天窓から自然光が降り注ぎ、ホワイトキューブの特徴を備えながらも自然の息遣いを感じられる空間だ。目の前にあるのは40台のスピーカーのみだが、その1台につき1人の声が聞こえ、徐々に歌声が重なり合い、やがて展示室は40人が今ここで歌声を響かせ合っているかのような臨場感のある場へと変化してゆく。音の波が身体を覆うような圧倒的な感覚を味わうことができるだろう。
ジャネット・カーディフ:40声のモテット
会期:3月15日(土)~5月11日(日)
場所:原美術館 ARC ギャラリーA(群馬県渋川市金井2855-1)
時間:9:30~4:30(入場は30分前まで)
休館日:木曜日(5月1日を除く)
2. 調布×架ける×アート 現実とエラー 沼田侑香(調布市文化会館たづくり)
沼田侑香の作品を通して考える、現実とデジタルの共生
多義性のある「共生」をアーティスト独自の視点から切り込み、私たちとアートを繋ぐ架け橋となることを目指すシリーズ展示「調布×架ける×アート」の第3弾。今回は、子どもの遊び道具としても広く知られるアイロンビーズを主に用い、「現実とデジタル世界の乖離とその未来」をテーマに作品を制作しているアーティスト沼田侑香の作品を通して、現実世界とデジタル世界の共生について考える。
見どころは、「Windows XP」内で登場するカイル君やウィンドウアイコンをモチーフにした4メートル×5メートルの超大作《Surfing the Net to the Moon》(2024)。日常で見慣れた光景ながらも、どれも奇妙な違和感(エラー)に溢れており、作品を通して、混ざりあいながらも共存する現実世界とデジタル世界の輪郭をなぞる試みとなっている。
調布×架ける×アート 現実とエラー 沼田侑香
会期:4月11日(金)~6月15日(日)
場所:調布市文化会館たづくり 1階展示室(東京都調布市小島町2-33-1)
時間:10:00~18:00
休館日:5月26日、27日
3. 横尾忠則「連画の河」(世田谷美術館)
新シリーズ「連画」も公開。88歳横尾忠則の現在地
様々な手法と様式を駆使し、多岐にわたるテーマの絵画を生み出し続ける画家、横尾忠則(1936-)。1972年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で個展が開催されるなど、早くから国際的な知名度を得てきたが、近年ではその息の長い驚異的な創造力が注目を集めている。
2023年春、身体の衰えに淡々と応じつつ、テーマも決めずに大きなキャンバスに向かうなか、横尾の「連歌」ならぬ「連画」制作が始まった。和歌の上の句と下の句を複数人で分担して詠みあうのが連歌だが、横尾は昨日の作品を他人の絵のように眺め、そこから今日の筆が導かれるままに描き、明日の自分=新たな他者に託して、思いもよらぬ世界がひらけるのを楽しんでいた。本展では「連画」に加え、150号を中心とする新作油彩画約60点やスケッチなどで、88歳の横尾忠則の現在を紹介する。
また、グッチ銀座 ギャラリーでも個展「未完の自画像 - 私への旅」が開催中。初公開となる自画像や家族の肖像などの最新作6点を含めた20点以上の作品が展示されるほか、1970年の大阪万博で横尾がデザインを手がけて話題となった赤い「足場」をインスタレーションとして再現している。
横尾忠則「連画の河」
会期:4月26日(土)~6月22日(日)
場所:世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1-2)
時間:10:00~18:00(入場は30分前まで)
休館日:月曜(5月5日を除く)5月7日
未完の自画像 - 私への旅
会期:4月23日(水)~8月24日(日)
場所:グッチ銀座 ギャラリー(東京都中央区銀座4-4-10 グッチ銀座 7F)
時間:10:00~20:00(入場は30分前まで)
休館日:なし
4. 川島小鳥『サランラン』刊行記念展(ユトレヒト)
川島小鳥がソウルで感じた孤独と暖かさ
川島小鳥による写真集『サランラン』(青幻舎)の刊行を記念した個展。川島は大学の仏文科を卒業後写真家の道へと進んだ。主な作品集に『BABY BABY』(2007)、『未来ちゃん』(2011)、『明星』(2014)、谷川俊太郎との共著『おやすみ神たち』(2014)『(世界)²』(2021)、第42回講談社出版文化賞写真賞、第40回木村伊兵衛写真賞を受賞している。
『サランラン』は、2023年の9月から2024年の3月まで毎月、ひとりで韓国に通って撮影してきたという川島による新たな写真の世界が広がっている。主な舞台となるのは、秋から春のはじまりまでにかけてのソウルの風景だ。煌びやかな群れと古びた小さな建物が並ぶ街並み、夕焼けや枯れ葉の黄金色、現地で出会った人々。親密さとともに、旅先で感じる寂しさ、そして心地よい孤独感を内包した写真は、これまでの作品とはまた異なった魅力を持っている。本展では限定のオリジナルトートやTシャツなど、グッズも販売予定。
川島小鳥「サランラン」刊行記念展
会期:4月29日(火)~5月19日(日)
場所:ユトレヒト(東京都渋谷区神宮前5-36-6 ケーリーマンション2C)
時間:12:00~19:00
休館日:5月12日
5. TOKIO ART BOOK FAIR 2025(芝パークホテル)

新たなスタイルのアートブックフェアが誕生。展覧会も必見
TOKYO ART BOOK FAIR(TABF)が企画する、アートブックに特化したフェア。今回は、TABFに出展経験のある20組を運営チームがホスト出展者として選出し、ホスト出展者が、ゲスト出展者2組を推薦するという形式をとった。今回参加する出版社、書店、ギャラリーは、国内をはじめ、韓国、中国、スイスなど国際色豊かな55組。
また同フェアでは、シンガポールのデザイナー、Alvin HoとClara Kohによって2002年に設立されたインディペンデントな創造的実践「Atelier HOKO」による展覧会も開催される。デジタルメディアが私たちの物理的な世界との関わり方を変えつつある今、「本を読むとはどういうことか?」をテーマに読書という行為にまつわる人間のふるまいや感覚について、様々な「問い」を来場者に投げかける。
TOKIO ART BOOK FAIR 2025
会期:5月2日(金)~5月4日(日)
場所:芝パークホテル(東京都港区芝公園1-5-10)
時間:12:00~19:00(2日は13:00~入場は30分前まで)