認めたくない真実:NFTをバカにしている「一流画家」も、やっぱり流行りに乗るべき?
世界が危機に瀕し、アートマーケットが暴走する中、読者から寄せられたアートに関する質問に、ニューヨークを拠点とする敏腕アートコンサルタント、Chen & Lampert(チェン&ランパート)の2人が答えます。
質問:名の通った画家である私は、NFTアートのブームにまったく関心がない。アート界はNFTの話題で持ちきりだが、NFTが何なのかよくわからないし、メディアアートやビデオアートを作っているわけではないので、知ろうという気も起きない。所属ギャラリーとの付き合いで、暗号通貨企業の担当者と何度か会ったことがあるが、そのたびに、無名アーティストたちを億万長者にする仕組みについて延々と説明を聞かされた。NFTアーティストたちのサイトをチェックしてもみたが、やはり納得できない。私に言わせれば、どれもこれもアートには見えないのだ。実は、尊敬するキュレーターから、聞いたことのない新しいプラットフォームでNFT作品を発表しないかと持ちかけられている。だが、こうしたデジタルプラットフォームの利用者が、私の作品に興味を持つとは思えない。誘いに乗ってNFT作品が売れ、関係者全員が儲けられたら万々歳ではある。しかし、もし失敗したら、私のキャリアがダメージを受けないだろうか? 実物の絵画の売り上げに影響しないかも心配だ。長い年月をかけて、やっと作品が一流レベルの高値で売れるようになったのに。
ずいぶんと、自作の価値を高く見積もっていらっしゃるようだ。手作業でこつこつ描く絵画の値打ちを損ねかねないもの全てに目くじらを立てる画家のご多分に漏れず、あなたもNFTに言われのないケチをつけている。思い出してほしいのは、絵画こそ「元祖NFT」だということだ。大昔から王侯貴族や聖職者、実業家、間抜けな金融マンなどが買い漁ってきた、ポケモンカードみたいなものなのだから。あなたにNFTを見下す資格はない。作品をアートマーケットで売っている以上、それがマネーロンダリングの手段に使われている可能性は十分にある。そう考えると、NFTとあなたの絵に大きな違いはないことが分かるはずだ。
信じられないかもしれないが、NFTを作っている10〜20代の若者や、あらゆる年齢の非モテのオタクたちは、既存の芸術とはまったく違う新しいアートを開拓しようとしている。このことをもっと評価したほうがいい。彼らはあなたがいるファインアートの世界から排除されていることを知り、自分たちなりの新しいやり方を編み出したのだ。確かに、新奇なスクリーンセーバーのような彼らの作品の大半は、ろくでもないし美的価値はないかもしれない。だが、少なくとも彼らは21世紀の世界のあり方と向き合っている。彼らに言わせれば、あなたのアナログ作品は、静物というより過去の遺物だろう。
NFTを試してみることが、リアル作品の売り上げにダメージを与えるとは思えない。あなたの作品を買っている熱心なコレクターは、人気スニーカーの最新作を買うために並んだり、ネオナチのGIF画像に大枚をはたいたりするタイプではないだろうから。むしろ、宣伝効果が期待できるのではないか。瞬間的にでも注目度がアップし、所属ギャラリーのウェブサイトであなたのページへのアクセス数がちょっと増えるかもしれない。問題は、踊るイルカの画像を少しずつデザインを変えて1000点作ることに、あなた自身が耐えられるかどうかだ。あなたのようにNFTを軽蔑している人が、このすばらしい新世界をうまく渡っていくのは難しいように思えるが。
質問:アーティストの私は、ここ数年のコロナ禍でもそれなりに稼いでこれた。実は2つの展覧会のタイトルをつけるのに、知り合いの詩人に協力してもらったのだが、それに対して謝礼を払っていないことが気になっている。その詩人からは、自分の名前を出してくれとも言われていないし、いかなる形の報酬も要求されていない。とはいえ、やはり謝礼を払うのが筋ではないかと思う。私が自分の仕事の対価としてお金をもらっているのだから、詩人も報酬を受け取って当然だろう。どのくらい渡せばいいのか見当がつかないが、何かいい案はないだろうか。
アーティストが私に聞いた
「個展のタイトル考えてくれた
詩人にどう報いたらいい?」
詩はタダじゃない
詩人にはお金がない
道端で売る詩集
今どき誰も読みゃしない
作品を贈ろう
すぐ飾りたくなるような
いつか換金できるような
いっそ現金はどうだろう
ハッパ代の足しになるような
タイトルは難しい
だから詩人は頼もしい
感謝を形に
そうしたら相手も嬉しい
次回も期待に
応えてくれたらすばらしい
(翻訳:野澤朋代)
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※本記事は、Art in Americaに2022年7月7日に掲載されました。元記事はこちら。