ブッダの副葬品の宝石がオークション出品で各界が大論争。インド文化省の抗議で延期が決定

ブッダの遺骨の副葬品である宝石334点が、5月7日にサザビーズ香港でオークションにかけられる予定だったが、インド文化省が抗議したために出品の延期が決まった。

オークションに出品される予定だったブッダの副葬品の宝石。Photo: Courtesy of Sotheby's

ブッダの遺骨の副葬品である宝石334点が、サザビーズ香港で5月7日に行われるオークションに出品される予定だったが、インド文化省が抗議。インド香港の裁判所および国際機関を通じて「文化遺産法違反」により競売会社に対する法的措置を取ると迫ったことを受けて出品が延期された。

今回出品予定だった遺物は1898年、英国人技師ウィリアム・カクストン・ペッペが北インドの彼の所有地にあった埃まみれの塚から発見された。ガーディアン紙によると、紀元前240~200年頃にストゥーパと呼ばれるドーム状の墓碑に、紀元前480年頃に亡くなったブッダの火葬された遺骨の一部と混ぜられて埋葬されていたもので、その中には装飾品に加工されたり、自然形のままの紫水晶、珊瑚、ガーネット、真珠、水晶、貝殻、金などの宝石約1800点が含まれていた。

英国王室は1878年にインド宝物発見法の下でペッペが発見した遺物の所有権を主張。その後ブッダの遺骨と灰はシャムのチュラロンコーン王に贈られ、南アジアの国々に分配されて崇拝されているという。ガーディアン紙はまた、「宝石のほとんどはコルカタの植民地博物館に送られたが、ペッペには約5分の1の保持が許可された」と報じている。

ペッペに所持が認められた遺物は、その後一般にはほぼ公開されることなく保管され続けた。だがペッペの子孫がこのコレクションから宝石334点をサザビーズに出品することを決め、それが公表されると仏教界から歴史・美術界まで世界規模の騒動となった。予想落札価格は約1億香港ドル(約18億円)だった。デリーを拠点とする美術史家ナマン・アフージャはBBC Newsの取材に対して「ブッダの遺物は、市場で売られる芸術作品のように扱える商品なのだろうか?そしてそうでないならば、売り手はどのような倫理的権限をもってそれらを競売にかけるのか?」と批判した。

ガーディアン紙が報じるところによると、インド文化省は5月5日にサザビーズに法的通知を送り、これらの宝石はブッダの神聖な体として扱われるべきであり、販売が進めば「植民地搾取の継続に加担することになる」と伝え、出品者であるペッペの曾孫のクリス・ペッペには、「インドと世界の仏教徒コミュニティの譲渡不可能な宗教的・文化的遺産を構成する」宝石遺物を売却する権限がないとも主張した。そしてインドと香港の裁判所および国際機関を通じて「文化遺産法違反」により競売会社に対する法的措置を取ると迫った。

これを受けてサザビーズはオークションの延期を決定した。東南アジア美術専門の学芸員であり専門家のコナン・チョンはサザビーズの決定を歓迎し、「これはペッペ家が最終的にタイ、カンボジア、スリランカなど各地で販売に抗議している仏教徒の声や、インド政府と協議して、全人類とそれらを本当に公平に共有する方法を見つける貴重な機会です」と今後の展開への期待を込めた。

今回のオークションの延期について、サザビーズは次のように話している。

「インド政府によって提起された問題に鑑み、委託者の同意を得て、5月7日に予定されていた歴史的なブッダの宝石の競売は延期されました。これにより当事者間の協議が可能となりましたので、適切な情報を共有できることを楽しみにしています」

from ARTnews

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