ビルバオ・グッゲンハイム美術館拡張計画に反対運動ののろし。「生物圏保護区に不可逆的影響」

スペイン北部バスク州のビルバオ・グッゲンハイム美術館は、著名建築家フランク・ゲーリー設計の船のような威容で知られる一大観光スポットだ。その拡張計画に環境保護を訴える団体が警鐘を鳴らし、反対運動ののろしを上げている。

スペインのバスク地方にあるビルバオ・グッゲンハイム美術館の外観。設計はフランク・O・ゲーリー。Photo: Joaquin Gomez Sastre / NurPhoto via Getty Images

地中海地域の湿地保護を訴える団体、メディタレーニアン・アライアンス・フォー・ウェットランズ(Mediterranean Alliance for Wetlands)が、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館拡張計画からウルダイバイ生物圏保護区を守るためのキャンペーンを開始した。同団体はリンクトインへの投稿で、同地の環境問題に関する状況をこう説明している。

「グッゲンハイム美術館による生物圏保護区内での拡張計画には、生物多様性や水質、ひいては生物圏保全の枠組み全体を損なうリスクがあります。現在77の団体が、ユネスコ、ラムサール条約事務局、スペイン政府に対し、この計画が生物多様性と水資源に及ぼす不可逆的な影響について警告を発しています」

このコメントには、投稿時点で約2400人が署名した嘆願書へのリンクがあり、そこには次のような主張が記されている。

「プロジェクトは外部から押し付けられたもので、地域住民のニーズに応えるものではなく、一部の人だけを利することを目的としています。また、保護区の保全や社会的・経済的な目標と無関係であるばかりか、それらに不可逆的かつ大きな影響を与えるでしょう」

ビルバオ・グッゲンハイム美術館の拡張計画は、ビルバオに隣接するウルダイバイ生物圏保護区とゲルニカの町にまたがり、実現すれば少なくとも年間14万人の来訪者が見込まれるとされる。

同計画は地域の経済的・文化的な活性化につながると見られる一方で、開発の過程で保護区の自然に大きなダメージを与えかねないため、当初から議論の的になっていた。観光客が増加することで、渡り鳥をはじめ野生動物の宝庫であるウルダイバイの生物保護計画を狂わせ、保護区の生態系を破壊するリスクのある新たなインフラ導入につながることが懸念されている。(翻訳:石井佳子)

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