世界的ナポレオンコレクターの品々がオークションに。トレードマークの二角帽子には1億円超の予想価格

フランスで最も有名なナポレオンコレクター」として知られるピエール=ジャン・シャランソンのコレクションから約150点が、6月25日に開催されるサザビーズのオークションに出品される。

ナポレオンの二角帽子。Photo: Florian PERLOT pour ArtDigitalSt

有名なナポレオンコレクター、ピエール=ジャン・シャランソンの所蔵品約150点がパリサザビーズオークションかけられる

今回出品されるのは、家具、オールドマスターの絵画、書籍、銀食器など、帝位への昇進から流刑地セントヘレナ島までの軌跡を詳細に追える品々だ。サザビーズは声明で、これらは「(ナポレオンの)内面世界を反映した深く個人的な遺物でもあり、これまで市場に出た中で最も重要なもののひとつです」と強調。そして次のように説明した。

「ナポレオンは自著『ナポレオン言行録』の中で、『私の一生はなんという小説だろう』と記しました。(品々は)その通り、戦場や儀式場、プライベートの部屋など、権力、政治、栄華を巡る年代記と、皇帝という神話の背後にある男の弱さや野心、矛盾がまるで小説のように交互に展開され、鮮烈な歴史叙事詩のようにも読めます」

今回の目玉は、ナポレオンのトレードマークとも言える二角帽子(バイコーンハット)だ。 二角帽子は通常、角の部分が前後に来るようにかぶるものだが、ナポレオンは両肩に角がくるようにかぶる「アン・バタイユ」という方法に徹していたことが知られている。この帽子はナポレオンの公式帽子職人だったプパールが製作し、1809年5月のアスペルン・エスリンクの戦いで活躍したムートン将軍に贈ったものだ。その際、ナポレオンは「私のムートンはライオンだ」と賞賛したと伝えられている。予想落札価格の最高額は80万ユーロ(約1億3000万円)。

そのほかの注目は、1804年にパリのノートルダム大聖堂で行われた皇帝ナポレオンの戴冠式で使用された紋章剣と杖で最高予想落札価格は40万ユーロ(約6500万円)、個人的に使用した金と黒檀の印鑑が同・25万ユーロ(約4000万円)。さらに、ナポレオンの存在をリアルに感じられるアイテム、着古したストッキングと野営で使用した携帯用ベッドも出品される。

ナポレオンについて、サザビーズ・パリのシルバー部門販売責任者マリーヌ・ドゥ・セニヴァルはUS版ARTnewsに、「ナポレオンはロックスターの地位を獲得しました。 世界で最も有名な人物の一人として、彼の人生と功績は、一流の映画監督を含む多くの人々の想像力をかき立て続けています」と語った。

2022年6月11日、自邸で開催されたウクライナ支援のためのオークション・ガラでのピエール=ジャン・シャレンコン。Photo: Foc Kan/WireImage Getty Images

これらの貴重な品々を出品するのは、ナポレオンのコレクターとして知られる、ピエール=ジャン・シャランソンだ。彼はナポレオンに魅了されてわずか18歳で最初の作品を購入。2006年から2019年まで、ナポレオン時代に関連する品々の鑑定、仲介、購入、販売、取引を専門とするコンサルティング会社「シャランソン・エンパイア」を経営した。

彼は、2015年にパリ・リュクサンブール宮殿の西側翼にあるヴィヴィエンヌ通りの邸宅を600万ユーロ(現在の為替で約9億7500万円)で購入し、「ヴィヴィエンヌ宮殿」と名付けて1000点以上のナポレオンのコレクションで飾り立てた。彼は自ら「ナポレオンの報道官」と名乗り、マスコミの前に出る時には、常に首からナポレオンの末弟ジェロームの印章を下げ、指には5.33カラットのルビーをあしらった戴冠式の指輪をはめていた。その甲斐あってシャランソンの名は知られるようになり、ザ・タイムズ紙に「フランスで最も有名なナポレオンコレクター」と評されるようにもなった。

だが今年3月、彼がスイス・ライフ・バンク・プリヴェから借りた1000万ユーロ(約16億円)の返済に苦しんでいると報じられた。 Le Parisien紙がシャランソンを直撃したところ、「借金まみれではない。 うまくやっている」と答えている。

今回の出品について、マリーヌ・ドゥ・セニヴァルは、「シャランソンは40年以上かけて、ナポレオンの生涯を網羅する膨大なコレクションを作り上げました。その結果、オークションに出品される全ての資料には、ナポレオン、最初の妻であるジョゼフィーヌ、2番目の妻マリー=ルイーズ、皇室など、夢のような出所が記されています。 ナポレオンへの関心が熱を帯びている今、このコレクションの登場は、コレクターにとって、自分だけのフランス史の一部を手に入れる素晴らしい機会となるでしょう」と語った。

セニヴァルの言う通り、近年ナポレオンの遺物に対する人気が高まっている。先日5月22日、ナポレオンが私的に作らせた剣がフランス・パリのオークションにかけられ、予想落札価格70万~100万ユーロ(約1億1400万円~約1億6000万円)を大きく上回る460万ユーロ(約7億6000万円)で落札された

シャランソンの品々は、オークションの前に5月23日から27日までサザビーズ香港で、6月5日から11日までサザビーズ・ニューヨークで展示される。(翻訳:編集部)

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