ガウディ建築の隠された美が復活! カサ・バトリョの大規模改修が完了、一般公開がスタート

2024年にスタートしたバルセロナの観光名所のひとつであるガウディ建築、カサ・バトリョの修復プロジェクトが完了した。約5億9300万円の資金を投じて行われた修復作業により、100年以上隠されていた裏のファサードと中庭が、ガウディが意図した本来の輝きを取り戻している。

改修されたカサ・バトリョ。Photo: Claudia Maurino
改修されたカサ・バトリョ。Photo: Claudia Maurino

アントニ・ガウディのキャリアを象徴する住宅建築のひとつであるカサ・バトリョ。その修復プロジェクトが2024年に開始した。修復の指揮を執ったのは建築家のザビエル・ビリャヌエバで、350万ユーロ(約5億9300万円)の予算が費やされた。そして2025年6月19日、修復が完了したカサ・バトリョの一般公開がスタートした

1877年に建設された当初、カサ・バトリョは特筆すべき特徴の無い古典的な建築物だった。その後1903年にバルセロナの実業家、ジョゼップ・バトリョが購入し、1904年にガウディに建物の改修を依頼。バトリョは当初、建物を取り壊して新たな家を建設する予定だったが、ガウディに説得されて改修する方針に変更した。そうして2年後の1906年、カサ・バトリョは改修が完了。バルセロナ市議会は同年に、この住宅を最優秀建築物賞の候補に選出したが、その年の賞は別の建築家に授与された。

2005年に世界遺産に登録されたカサ・バトリョは、バルセロナ観光の主要な目的地のひとつとして愛されてきた。過去には、レフィク・アナドルによるプロジェクションマッピングが施されたり、空間内は隈研吾による装飾で彩られるなど、建物の正面や内部は文化的取り組みのプラットフォームとしても機能してきた。

レフィク・アナドルによるプロジェクションマッピング

一方で裏のファサードは長らく人目に触れることはなく、ガウディが施した装飾は経年によって劣化し、100年以上にわたって周囲に他の建築物が建てられたことで覆い隠されてしまった。そんななか、2025年にカサ・バトリョの世界遺産登録から20年の節目を迎えるにあたりスタートしたのが、今回の修復プロジェクトだった。これにより、隠されていた色鮮やかな装飾が再び姿を現し、輝きを取り戻した。修復プロジェクトの完了に際して、建築家のビリャヌエバはアート・ニュースペーパーに対して次のように語った

「カサ・バトリョの中庭と裏のファサードの修復は、単なる改修作業ではありません。このプロジェクトは、当時の記憶の再生を試みる取り組みであると同時に、アントニ・ガウディが生きた遺産を探し求める行為でもありました。この修復作業は、ガウディが1906年に構想した状態に空間を戻すための、何年にもわたる綿密な研究、歴史的記録の調査、そして細心な職人技が組み合わさったことで実現したものです」

修復された建築要素には、カタルーニャのモデルニスモ建築に頻繁に使われたノーラモザイクで複製された舗装が含まれているほか、鉄製の手すりと扉、そして漆喰やガラス、陶器のトレンカディス(破砕タイル)が使われていた中庭の壁などがある。カサ・バトリョは現在、チュッパチャプスの創業者であるエンリク・ベルナトの娘であるニナ・ベルナトが所有しており、次のような声明を発表している。

「カサ・バトリョの本来の輝きを再発見できたこと、そしてその道のりを修復チームとともに歩めたことに心から感動しています。この修復作業は、遺産に対する私たちの献身と愛情から生まれた素晴らしいギフトだと思います」

修復作業の過程をドキュメントした映像は現在カサ・バトリョのYouTubeチャンネルで公開されているほか、一部始終を追ったドキュメンタリー映画が2025年中に公開される予定だという。

改修前の裏ファサード。Photo: David Cardelus
改修前の日陰棚(パーゴラ)。Photo: Claudia Maurino
改修後の日陰棚(パーゴラ)。Photo: Claudia Maurino
都市の中心にある静かなオアシスとして構想された中庭。Photo: Archive Marimon Batllo Family
改修前の中庭。Photo: Claudio Maurino
改修後の中庭。Photo: Claudio Maurino
モザイクタイルを敷き詰める様子。Photo: Courtesy of Casa Batllo
改修される前の鉄格子。Photo: Pere Vives
新たに張り替えられたトレンカディス(破砕タイル)。Photo: Claudia Maurino

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