独裁者フランコの子孫に宗教的彫像の返還を命じる最高裁判決。数年間の法廷闘争に終止符

スペインの最高裁判所は、長期独裁体制で知られるフランコ総統の子孫に対し、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の「栄光の門」を飾っていた彫像2体を返還するよう命じた。6月19日に発表された最高裁の声明で明らかになった。

サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の内部(2023年6月15日撮影)。Photo: AFP via Getty Images

1939年から75年まで長きにわたり独裁的な政治体制を敷いたフランシスコ・フランコ総統の子孫に対し、スペインの最高裁判所が2体の宗教的彫像をサンティアゴ・デ・コンポステーラ市に返還するよう命じる判決を下した。彫像の所有権をめぐり、数年間争われてきた裁判に終止符が打たれたことになる。

2体の彫像は旧約聖書に登場するイサクとアブラハムを表したもので、ユネスコの世界遺産に登録されている「サンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街」の一部である大聖堂の「栄光の門」の装飾として12世紀に制作された。

判決によると、彫像はフランコ政権下の20世紀半ばに大聖堂から撤去され、市が1948年に取得したとされている。その後、1950年代初頭にフランコ夫人の要望を受けた市当局の手配で、彫像はフランコ総統の夏の別荘であったメイラの館に移された。

しかし、別荘への移動は当時の市長の一存によるもので、合法的なものではなかったという。1975年にフランコが死去した後は子孫が彫像を相続し、何十年もの間、私的に所有されていた。

市と所有権を争ったフランコの子孫は、彫像は1954年に骨董商を通じて親族が購入したものだと主張。さらに法定代理人は、売買の詳細が文書化されていなかったと申し立てている。これに対し最高裁は、彫像は現在も市の法的所有物であると判断した。

法廷での争いが始まる前の2018年当時、スペインのエル・パイス紙は、2体の彫像はフランコ総統の孫にあたるフランシス・フランコが経営する不動産会社、プリスティーナ SLが保有していると報じていた。(翻訳:石井佳子)

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