今週末に見たいアートイベントTOP5: レンブラントらの「素描」約80点、小宮りさ麻吏奈が培養肉で問う人間中心主義

関東地方の美術館・ギャラリーを中心に、現在開催されている展覧会の中でも特におすすめの展示をピックアップ! アートな週末を楽しもう!

「Surface and Signal」(BLUM 東京)より展示風景。

1. 開館30周年記念コレクション展 VISION 星と星図 第1期「星図Ⅰ:社会と、世界と」(豊田市美術館)

ダニエル・ビュレン《ファクシミリより場所へ》1991年 PHOTO SOUVENIR :ⒸDB+AOAGP PARIS
アンゼルム・キーファー《飛べ! コフキコガネ》1990年
田 村 友 一 郎《 TiOS》2024年 

30年の歴史が描くアートの「星図」

同館の開館30周年を記念し、コレクションを見つめ直す展覧会を3期に渡って開催する。その第1期となる本展では、4つある展示室ごとに異なるテーマの作品を展示する。展示室1では国内屈指の所蔵数を誇る、戦後イタリア美術アルテ・ポーヴェラや、戦後ドイツ美術を紹介。中でも11年振りに公開される、幅約5メートル60センチのアンゼルム・キーファー《飛べ! コフキコガネ》は必見だ。

そして展示室2では、ダニエル・ビュレンのインスタレーション作品《ファクシミリより場所へ》が22年振りに再現展示される。展示室3では愛知を拠点に活躍、もしくは創作の出発点とした作家を特集。展示室4では2023年開催の個展で披露された田村友一郎の《TiOS》を展示空間に合わせて再構成する。

開館30周年記念コレクション展 VISION 星と星図 第1期「星図Ⅰ:社会と、世界と」
会期:6月21日(土)~9月15日(月祝)
場所:豊田市美術館(愛知県豊田市小坂本町8-5-1)
時間:10:00~17:30(入場は30分前まで)
休館日:月曜(7月21日、8月11日、9月15日を除く)


2. 「Surface and Signal」(BLUM 東京)

Surface and Signal Installation view, 2025 BLUM Tokyo © The artists; Courtesy of the artists and BLUM Los Angeles, Tokyo, New York Photo: SAIKI
Surface and Signal Installation view, 2025 BLUM Tokyo © The artists; Courtesy of the artists and BLUM Los Angeles, Tokyo, New York Photo: SAIKI
Surface and Signal Installation view, 2025 BLUM Tokyo © The artists; Courtesy of the artists and BLUM Los Angeles, Tokyo, New York Photo: SAIKI

響き合う4作家のなまなざし

形式の明瞭さや素材に対する率直なまなざし、そして「意図」と「偶然」の間に存在する繊細な感受性を共有する3人の日本人陶作家、浜名⼀憲、上⽥勇児、西條茜とアメリカ人アーティストのピーター・シアによる展覧会。

浜名は、灰色の粘土を練り上げてコイル状に成形し、それを手で積み重ねて形作った壺作品を制作。西條は陶という素材を使い、⾝体と共鳴し、⾝体のための空間を創出するようなフォルムを創り出す。上⽥は「美しい不完全さ」を重んじる信楽焼の伝統に⾃らの実践を重ねる。ピーター・シアは⼿の痕跡と絵の具の物質性が強調された絵画を出品。他作家の作品が持つ素材性や複雑な釉薬の層と共鳴させる。先日同ギャラリーの閉鎖が発表され、本展が最後の展示となる。

「Surface and Signal」
会期:6月28日(土)~8月2日(土)
場所:BLUM東京(東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森 5F)
時間:12:00~18:00
休館日:日月祝


3. スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで(国立西洋美術館)

ルネ・ショヴォー《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》1690年代/ペン、黒インク、筆、不透明水彩、透明水彩、金泥、紙/69.8x59.5cm/スウェーデン国立美術館蔵/©Cecilia Heisser/Nationalmuseum 2012
コルネリス・フィッセル《眠る犬》17世紀半ば頃/黒と赤のチョーク、黒の淡彩、黒の枠線、紙/12.2x17.2cm/スウェーデン国立美術館蔵/©Hans Thorwid/Nationalmuseum 2009
ジョヴァンニ・ダ・ウーディネ《空飛ぶ雀》水彩、赤チョークによるあたりづけ、紙/13.8x16.8cm/スウェーデン国立美術館蔵/©Cecilia Heisser/Nationalmuseum 2016
ヘンドリク・ホルツィウス《自画像》1590-91年頃/黒、赤、黄のチョーク、青と緑の淡彩、白チョーク、黒の枠線、紙/36.5x29.2cm/スウェーデン国立美術館蔵/©Cecilia Heisser/Nationalmuseum 2015

素描から巨匠の息吹を感じる

1792年にストックホルムに開館したスウェーデン国立美術館は、ヨーロッパ最古の美術館の1つだ。中世から現代までの美術・工芸やデザインを幅広く収蔵し、中でも素描コレクションは世界屈指の質と量を誇る。本展は、ルネサンスからバロックまでの名品約80点を同館コレクションから選りすぐり、イタリア、フランス、ドイツ、ネーデルラントの4地域に分けて紹介する。

素描の魅力はなんといっても作家との親近感。モティーフを前にした作家の痕跡が直に感じ取れる点にある。本展では、デューラー、ルーベンスレンブラントなどの素描も並ぶ。一方で、素描は環境の変化を受けやすく展示には様々な制約が設けられるため、これだけの作品数が集まるのは滅多にない機会だ。

スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで
会期:7月1日(火)~9月28日(日)
場所:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
時間:9:30~17:30(金土は20:00まで、入場は30分前まで)
休館日:月曜日(7月21日、8月11日・12日、9月15・22日を除く)、7月22日、9月16日


4. 小宮りさ麻吏奈 個展「CLEAN LIFE クリーン・ライフ」(WHITEHOUSE)

CLEAN LIFE インスタレーションビュー 2025 Photo by Ujin Matsuo
CLEAN LIFE インスタレーションビュー 2025 Photo by Ujin Matsuo
CLEAN LIFE インスタレーションビュー 2025 Photo by Ujin Matsuo
CLEAN LIFE インスタレーションビュー 2025 Photo by Ujin Matsuo

培養肉を通して「生」にまつわる政治を見つめる

小宮りさ麻吏奈は、自身の身体を起点としたクィアの視座から浮かび上がる新たな時間論への関心から、「新しい生殖・繁殖の方法を模索する」ことをテーマにパフォーマンスや映像作品の制作、スペースの運営などメディアにとらわれず活動してきた。

本展は、かねてより続けてきた細胞培養、特に培養肉に関するリサーチから生まれたインスタレーションを発表する。生と死、人間中心主義的な政治や倫理の線引きの中で、いかにそれが社会や制度によってコントロールされているものなのかを描きつつ、潔白で「クリーン」な肉としての培養肉や、細胞の権利、人工妊娠中絶、ヴィーガニズムなどの問題を通して、私たちを取り巻く「生」にまつわる政治を見つめ、問いを投げかける。

小宮りさ麻吏奈個展「CLEAN LIFE クリーン・ライフ」
会期:7月5日(土)~7月27日(日)
場所:WHITE HOUSE(東京都新宿区人町1-1-8)
時間:14:00~20:00
休館日:月火(7月21日を除く)


5. 国際的非暴力展#SUM_MER_2025(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)

展示風景。
展示風景。
展示風景。

アーティストたちが上げる「非暴力」の声

コロナ禍の影響がいまなお続く中、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるガザ虐殺に代表される、一般市民を脅かす暴力的な問題に対して、アーティストたちが連帯し「非暴力」「反戦」の声を上げる展覧会。2022年に秋田で第1回が開催され、今年で4回目となる本展は、曽根裕らをはじめとした国内外80人以上が参加する。

同展は、作家たちが1人で悩むのでも、無力感に打ちひしがれるのでも、見て見ぬふりをするのでもなく、手を動かし、集まり、展示することを手放さないようにしようという声から始まっている。それぞれが得意なこと、やりたいと思うことをやりきることがひとつの抵抗になるという信念から立脚するこの展覧会は、「展示」にとどまらない諸実践が必然的に生まれている。会期中は講演会やワークショップなどのイベントも開催されており、様々な方法でアーティストたちの「声」を聞くことが出来る。

国際的非暴力展#SUM_MER_2025
会期:7月5日(土)~8月3日(日)
場所:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(京都市下京区下之町57-1 京都市立芸術大学 C棟)
時間:10:00~18:00
休館日:月曜日(7月21日は開館、翌日7月22日が休館)

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