新石器時代の墓から350本のイヌの歯で飾られた抱っこ紐が出土。装飾のため繁殖されていた可能性
ドイツで約4500年前の女性の墓から、350本の犬の歯で装飾されたベビーキャリア(抱っこ紐)が発見された。一部の袋からは乳児の遺骨も見つかっており、新石器時代の特権階級の育児文化を示している。

ドイツのザクセン=アンハルト州クラウシュビッツ近郊の発掘調査で、約350本のイヌの歯を瓦のように重ねて縫い付けた装飾袋が複数発見された。この調査は、送電線建設工事に先立って実施されたもので、調査対象となった170キロメートルの区間では多数の埋葬地が見つかったという。
最も注目すべき発見は、新石器時代の女性たちと共に埋葬された装飾袋だった。袋そのものは腐敗して消失していたが、表面に縫い付けられていたイヌの歯は良好な状態で残っていた。
研究者によると、使用されたイヌは現代のスモール・ミュンスターレンダーに似た中型犬で、この装飾袋を作るために特別に繁殖されていた可能性が高いとされる。イヌたちは若い年齢で殺され、その歯が装飾に使われていた。例外的にキツネの歯や骨で作られた模造品が修理に使われることもあったが、基本的にはイヌの歯が使用されていた。
袋のサイズは底部が約30センチ、高さが20センチほどで、幅広いストラップで肩から下げて使用されていた。興味深いことに、袋の内部からは乳児や胎児の遺体が発見されており、これらの袋が現代でいうベビーキャリア(抱っこ紐)として使われていたことが判明した。
袋は身体の前面に着用され、赤ちゃんの脚と腕、頭部が出た状態で、これらはさらに細かい布で保護されていた。また、装着時には20センチ幅のスカーフが用いられ、スパンコールの刺繍が施されるとともに、イヌの歯で裏打ちされていた。
これらの装飾袋は、今回分析された女性の埋葬の約20%で発見されている。作成に多大な労力と資源が必要であることから、これらの袋は一部の限られた特権層の女性に限って使用されていたと考えられている。妊娠中に死亡した若い女性の墓にも袋が副葬されていることから、これらは個人の所有物であり、相続されない貴重品だったと推測される。
ウンストルート川と白エルスター川の間の地域では、同様の装飾袋が若い成人女性の装いの一部を成していたと考えられている。研究者たちは、袋の所有者たちがクラウシュビッツ共同体に属するエリート社会階級だったと考えている。
現在、袋を含む埋葬物は土塊ごとに回収され、ザクセン=アンハルト州遺跡保護・考古学関連当局の工房で詳細に調査される予定だ。現在20名のスタッフがクラウシュビッツで作業を行っており、7月中には発掘を完了する予定となっている。