鑑賞者があの作品をまたも「実食」。作家は「どうせならガムテープまで食べて欲しかった」とコメント
フランス・ポンピドゥー・メスで開催中の展覧会で、イタリア人アーティスト、マウリツィオ・カテランの問題作《Comedian》(2019)が、またしても「食べられる」事件が起きた。同作はこれまで度々同じ被害に遭っており、直近では、中国の暗号通貨王ジャスティン・サンがオークションで高額落札した本作を記者会見中に実食したことでも話題となった。

フランス東部のポンピドゥー・メスで開催中の展覧会で、再びあの作品が鑑賞者に「食べられる」事件が起きた。バナナをガムテープで壁に貼り付けたマウリツィオ・カテランの代表作《Comedian》(2019)は、発表当初から物議を醸してきたコンセプチュアル・アートの代表例のひとつだ。
美術館の発表によれば、来場者のひとりが本作に手を伸ばし、バナナを口にしたというが、係員の「迅速かつ冷静な対応」により、作品は数分以内に再設置されたという。美術館側は、「果物は生ものなので、アーティストの指示に従って定期的に交換されている」とAFPにコメントしている。
《Comedian》が展示されている「The Endless Sunday」展では、カテランの作品30点とフランス国立近代美術館所蔵の400点超の作品が紹介されている。パリにある本館ポンピドゥ・センターの分館であるポンピドゥー・メスの開館15周年を祝うこの展覧会は、カテランと館長のキアラ・パリージが共同で企画した。
今回の出来事についてカテランはAFPに対し、「鑑賞者がバナナの皮やグレーのガムテープまで食べなかったのが残念」と語り、「果物と作品を混同している」と皮肉たっぷりにコメントしている。
2019年のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチで初披露された《Comedian》は、当初から話題と議論を巻き起こしてきた。3つあるエディションのうち、最初の1点はペロタンによって12万ドル(現在の為替レートで1770万円)で販売された。2点目も同額で売却されたが、3点目はその後、3万ドル値上げされた上で匿名の個人コレクターの手に渡り、その後、グッゲンハイム美術館に寄贈された。
また、昨年11月には2つ目のエディションがサザビーズのオークションに出品され、暗号通貨プラットフォーム「TRON」の創業者である中国人富豪、ジャスティン・サンが、落札予想額の4倍を超える624万ドル(手数料込)で落札して大きな話題となった。入札は約10分間にわたり、オンライン、電話、会場から7名が競り合った末、サンが本作を入手した。
サンはこの作品の落札から9日後に香港で記者会見を開き、そこでバナナを完食してメディアを賑わせた。
ちなみに《Comedian》は、サンや今回の観客以外にも食べられてきた。初展示となった2019年のマイアミでは、パフォーマンス・アーティストのデヴィッド・ダトゥーナが「お腹が空いた」と言ってバナナを食べるパフォーマンスを行い、作品はフェア最終日に撤去された。さらに2023年には、ソウルのリウム美術館で開催されたカテラン展で、ソウル大学の美術学生が朝食を抜いたことを理由にバナナを食べたと報告されている。
from ARTnews