大論争に終止符。ブッダゆかりの宝石をサザビーズがインドに返還
仏教の開祖ブッダの遺骨の副葬品とされる宝石334点が、127年の歳月を経てインドに戻された。5月にサザビーズ香港がオークションへの出品を予定していたが、インド政府の強い抗議で延期されていたもの。

大手オークションハウスのサザビーズは、「ピプラワの宝石」と呼ばれるブッダゆかりの副葬品がインドが戻されたことを発表した。5月7日に香港でのオークションに出品されることが明らかになると、歴史学や仏教学の研究者、僧侶などの間に大論争が巻き起こり、インド政府が法的措置を辞さない態度を示したことから競売が延期されていた。
7月30日にサザビーズが発表したところによると、ムンバイを拠点とする老舗財閥系コングロマリットのゴドレジ・グループが、同社からこれらの宝石を買い取ったという。
インドのモディ首相は、「我われの文化遺産にとって喜びに満ちた日です!」とXに投稿。「ブッダの神聖なピプラワの遺物が127年ぶりに故郷に戻ってきたことを、インド人なら誰もが誇りに思うでしょう」と喜びを表した。
5月のオークションに対してインド文化省は、インドと香港の裁判所および国際機関を通じ、「インド法、国際法、国連条約に違反する」としてサザビーズへの法的措置を取るとしていた。その文書には、「これらの宝石はブッダの聖なる身体として扱うべき」であり、「インドと世界的仏教コミュニティの不可侵の宗教的・文化的遺産」の一部を構成するものと記されている。
宝石を含む副葬品は、1898年にイギリス人技師のウィリアム・ペッペが北インドのピプラワで開拓していた土地で発見された。紀元前240~200年頃のものと見られる仏塔に、紀元前480年頃に亡くなったブッダの遺骨の一部とともに埋められており、装飾品に加工されたものや、自然の形のままの紫水晶、珊瑚、ガーネット、真珠、水晶、貝殻、金などの宝石約1800点が含まれていた。
インド政府によると、宝石の大部分はコルカタの博物館に送られ、ペッペは一部を所有していたという。サザビーズ香港にオークション出品を委託したのはペッペの子孫だが、これに対して学術界から「宝石遺品の商業化は止めなければならない」との声が上がっていた。