ヴェルサイユ宮殿の彫刻がしゃべった!? 個性豊かなAI対話体験で若者にアプローチ

ヴェルサイユ宮殿は、庭園に設置された彫刻20体にAIによる会話機能を導入した。この機能は、情報提供にとどまらず、個性豊かな像との対話を通じて若年層の関心を引きつける狙いもある。

ヴェルサイユ宮殿にあるラトナの噴水。Photo: Pascal Le Segretain/Getty Images
ヴェルサイユ宮殿にあるラトナの噴水。Photo: Pascal Le Segretain/Getty Images

彫刻が言葉を発するとしたら、どんな話をするだろうか。そんな空想を現実に近づける会話型AIが、ヴェルサイユ宮殿のスマートフォンアプリに登場した

ヴェルサイユ宮殿の庭園には、ルイ14世の命によって当時の一流芸術家が制作した彫刻が数多く配置されている。今回、会話機能を通じて対話することが可能になったのは、計600体におよぶ彫像のうち、スキュロス島のアキレス像やラトナの噴水、スフィンクスに乗るキューピッド像など20体だ。

フランス文化省によると、ヴェルサイユ宮殿には年間840万人が訪れ、フランス内ではルーブル美術館に次ぐ来館者数を誇る。しかし、そのうち約8割が海外からの観光客で、来訪者の平均年齢は40歳。ヴェルサイユ宮殿は、OpenAIをはじめとするビッグテックと連携することで、来場者に情報を提供するだけでなく、より若い国内の観客にその魅力を訴求したい考えだ。

新しい会話機能では、それぞれの彫刻の特徴に応じた“性格”が与えられ、自らの素材や制作意図について語ってくれる。例えば、アキレスやレトは誇り高く厳粛な語り口で話し、キューピッドは愛についてユーモラスな会話を繰り広げる。また古代オリンピックで活躍したレスリング選手、クロトンのミロンは重々しくシリアスな口調で過去の栄光について話してくれる、といった具合だ。

スフィンクスに乗るキューピッド像に素材を聞いてみると、本体は銅で、腰を掛けているスフィンクスは大理石でできていることを教えてくれた。また、なぜスフィンクスの背にまたがっているのかを尋ねると、次のような答えが返ってきた。

「ちょっとふざけた見た目をしているかもしれないけど、ちゃんと意味もあるんだよ! スフィンクスって謎と秘密の生き物でしょ? でもその背中に座って、お花を飾っているんだよ。つまり、愛があればどんなナゾも解けちゃうし、怖さを優しさに変えることもできるんだ」

スフィンクスに乗っているキューピッド像。Photo: DeAgostini/Getty Images
スフィンクスに乗っているキューピッド像。Photo: DeAgostini/Getty Images

とはいえ、これらのAIには厳格なガードレールが組み込まれており、彫像たちは芸術と歴史に話題を限定している。例えば、ラトナの噴水に飾られているレトに対して、「好きな食べ物は?」や「政治についてどう思う?」といった質問をしても、明確な答えは返ってこない。また、双子のアポロンとアルテミスは、子育てについて尋ねられても「どちらがより手がかかるかというより、それぞれに違った形で愛情を注ぐことが大切だ」と、踏み込んだ回答はしない。

ヴェルサイユ宮殿がこうした技術を導入するのは今回が初めてではない。Google Arts & Cultureの前身となるプロジェクト「Google Art Project」が2011年にローンチされた際には、初期参加館17のうちのひとつとして名を連ねていたほか、2019年にはGoogleと共同で、「ヴェルサイユ: 宮殿をあなたのものに」を発表している。このほか、Ubisoftが開発したゲーム「ジャストダンス2024エディション」では、レトナの噴水や宮殿内の鏡の間が背景として採用されている

しかし、今回の取り組みはかなり野心的な挑戦だと言えるだろう。ヴェルサイユ宮殿のプレジデントを務めるクリストフ・レリボは、会話型AIの公開に際して発表した声明でこう語っている。

「科学的革新はヴェルサイユ宮殿の歴史の不可欠な部分です。宮殿の建設当初から、人類初の気球飛行実験に至るまで、ヴェルサイユは時代ごとの技術革新の舞台となってきました」

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