「世界の終わりを見た」──原爆投下から80年、《I Saw the World End》がロンドンとオンラインで公開

1945年の原爆投下から80年を迎える8月6日、アーティストのエス・デヴリンとマチコ・ウェストンが手がけた映像作品《I Saw the World End》が、ロンドンの帝国戦争博物館とそのウェブサイト、そしてピカデリー・サーカスで上映される。広島・長崎に落とされた核兵器の記憶と、その後の世界に与えた影響を、日本とイギリス双方の視点から描いた10分間のデジタル作品だ。

「戦争を知らない若い青年の皆様へ。気づいたときには手遅れです。戦争は忍び足でやってきます」といった、戦争を経験した人々の声が吹き込まれている。Photo: Screenshot via YouTube
「戦争を知らない若い青年の皆様へ。気づいたときには手遅れです。戦争は忍び足でやってきます」といった、被爆者の声で作品は構成されている。Photo: Screenshot via YouTube

広島に原爆が投下されてから80年を迎える8月6日、ロンドンの帝国戦争博物館とピカデリーサーカスで、記念碑的なデジタルアート作品《I Saw the World End》が特別上映される。作品タイトルは、H. G.ウェルズの小説『The World Set Free』(邦題『解放された世界』)に由来しており、核の力と破壊の象徴性を強く含んでいる。2020年に帝国戦争博物館から委嘱されて本作を手掛けたのは、アーティストで舞台美術家のエス・デヴリンとマチコ・ウェストン、楽曲は、ロックバンドのポリフィアだ。

本作は、1945年に広島と長崎を襲った原爆投下をめぐる記憶に向き合って制作された二部構成のデジタル映像作品だ。10分にわたる作品を通じて、核爆発という一瞬の惨事に象徴される、人類の歴史に深い傷痕を残した転換点と、戦争という行為そのものへの認識やその後の国際秩序に決定的な影響を及ぼした瞬間を、日本とイギリスそれぞれの視点から描いている。

上映は8月6日(現地時間)の一日限り。午前10時から午後5時までは帝国戦争博物館の上映室で、午後8時45分からはピカデリー・サーカスの巨大LEDスクリーン「ピカデリー・ライツ」に投影される。また、帝国戦争博物館のウェブサイトでも視聴できる

この作品は、広島への原爆投下から75周年にあたる2020年にも注目を集めた。当初はピカデリー・ライツでの上映が予定されていたが、同年に発生したベイルートでの爆発事故を受けて、巨大スクリーンでの上映は中止に。代わりに帝国戦争博物館とオンラインで公開された。この判断についてガーディアン紙は当時、「良識よりも過剰な配慮を優先した人物によって上映が中止された」と批判的に報じている

アメリカによる広島・長崎への核兵器使用では、あわせて10万人以上が即死し、その多くは民間人だった。さらに、放射線の影響によって後年亡くなった人々も数千人にのぼる。核兵器が戦争で使用されたのは、これが唯一の例だ。

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