スミソニアン、歴代大統領に関する展示で「トランプ弾劾」の説明を縮小。政府関与は否定
スミソニアン国立アメリカ歴史博物館の常設展「The American Presidency: A Glorious Burden(アメリカ大統領:栄光ある重責)」に掲出されていた、トランプ大統領の弾劾に関する解説パネルが更新された。これをめぐり、民主党からは「検閲だ」との批判も出ているが、同館は政府の圧力を否定している。

スミソニアン国立アメリカ歴史博物館は、常設展「The American Presidency: A Glorious Burden(アメリカ大統領:栄光ある重責)」において、アンドリュー・ジョンソンとビル・クリントンの弾劾と並んでトランプ大統領の裁判に関する情報を設置パネルに記載していた。そこには、辞任しなければ弾劾されていたであろうリチャード・ニクソンについても言及されていた。
しかし同館は、「見た目や設置場所、時系列をはじめとする展示方法において基準を満たしていなかった」として、このパネルを撤去。当初のパネルは一時的なものであり、他の展示と一貫性がなく展示物を遮っていたと説明していた。そして撤去から約1週間後、新しいパネルを再設置した。
新しいパネルでは、「大統領職からの罷免に直面したのは3人のみ」という記載に変更されており、ドナルド・トランプ大統領の弾劾に関連する解説も更新されている。ワシントン・ポスト紙によれば、新パネルは以前のものよりも情報量が簡素になっているという。
新しいパネルでは再設置にあたって同館は次のような声明を発表した。
「当館は、『The American Presidency: A Glorious Burden』展に設置されている解説パネルを更新しました。これにより、これまで弾劾された大統領の名はすべてパネルに記されています。国立博物館としての役割を果たせるよう、私たちは、一般公開される内容が正確さと配慮ある設計を両立できるよう細心の注意を払っています」
弾劾に関する解説パネル撤去をめぐっては、民主党の上層部から政府の圧力があったのではないかとの批判の声が上がっていた。上院少数党院内総務のチャールズ・E・シューマーは、「悲しい」「情けない」と非難し、次のように述べた。
「大統領は歴史を書き換えようとしている。いや、書き換える権限があると思っているのです。もちろん実際に書き換えることはできませんが、本人は実現できると考えているのでしょうか。彼がアメリカ歴史博物館に対して行っていることは検閲であり、まるでジョージ・オーウェルの小説のようです。権威主義体制、あるいは北朝鮮の指導者がやるようなことであり、我が国ではあってはなりません」
一方、スミソニアン協会はこれを否定。政府関係者から展示物の撤去は求められていないと声明を発表し、パネル以外に変更を加えた箇所はないとも述べている。また、スミソニアン協会の「不適切なイデオロギー」を精査する任務を負う政府職員のリンゼイ・ハリガンは、ワシントン・ポスト紙の記事の中で解説パネルの修正に政府は一切関与していないと改めて強調し、こう続けた。
「スミソニアン協会が『アメリカ史に真実を取り戻す』大統領令に沿った措置を講じていることは好ましい点です。その真実の一部として、トランプ大統領が上院で2度にわたって完全に、すべての容疑について無罪となったことは、記録されるべき重要な事実です」
アメリカでは、第二次トランプ政権の発足以来、スミソニアン協会を含む文化機関への政治的介入に対する懸念が高まっている。公的美術館・博物館では「反米的なイデオロギー」であるとして、多様性、公平性、インクルージョン(DEI)に関する部署が廃止されて以降、その傾向は一層強まっている。(翻訳:編集部)
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