海上油田を深紅に染める──アニッシュ・カプーア×環境団体が温暖化への抗議作品を発表

環境保護団体グリーンピースとアーティストのアニッシュ・カプーアが、イギリス・ノーフォーク沖のシェル石油掘削装置で抗議アート作品《BUTCHERED》を制作した。装置に設置した巨大キャンバスを真紅に染めたこの作品は、地球温暖化における人類の責任に対する強烈な批判だ。

アニッシュ・カプーアの作品を石油・ガス掘削装置に設置する抗議参加者。Photo: Courtesy of Greenpeace

環境保護団体グリーンピースの活動家たちが、イギリス・ノーフォーク沖にある石油・ガス掘削装置に12×8メートルのキャンバスを設置し、深紅色に染め上げた。《BUTCHERED(無惨に破壊された)》と題されたこの作品は、グリーンピースとアニッシュ・カプーアが共同企画したもので、おそらく稼働中の採掘装置で展示される初のアート作品だ。

血を連想させるこの作品は、海水、ビートパウダー、池用染料を混ぜた赤い液体1000リットルを巨大なキャンバスに吹きかけて制作された。活動家たちはアークティック・サンライズ号でシェルの掘削装置「スキフ」に向かい、到着後、7人のクライマーが装置によじ登り、骨組みを吊り上げ巨大なキャンバスを張り渡した。

活動団体の関係者によれば、本作は、「異常気象がもたらす深刻な被害」を伝えることを意図したという。また、カプーアは、「人々は地球温暖化の原因が私たちにあることを忘れがちです。多くの人が現実から目を背けている一方で、その大部分は大手石油・ガス会社によって引き起こされているのです」と述べた。

1971年にカナダで設立されたグリーンピースは、環境保護を目的に世界各地で非暴力的な抗議活動を展開してきた国際NGOだ。核実験の中止や捕鯨反対、森林伐採や有害廃棄物の投棄防止、気候変動対策などを訴え、ときには船や小型ボートで現場に乗り込み、施設に横断幕を掲げるなどして問題を可視化してきた。

こうした活動の一例として、2023年には、カナリア諸島沖で輸送されていたシェル掘削プラットフォームに小型ボートで接近し、13日間にわたって占拠した。シェルは安全面への懸念を理由に提訴したが、活動家側は2024年12月、賠償責任を負わない代わりにイギリスの海難救助団体へ30万ポンド(約5980万円)を寄付し、北海の関連施設で抗議を一定期間行わない条件で和解が成立した

カプーアは、グリーンピースのこうした「英雄的」な行動に関心をもっていたといい、数年間にわたって同団体イギリス支部と議論を行い、積極的に協力する方法を模索していた。そして昨年、ガス・石油掘削装置で作品を制作することを発案したという。また、カプーアはガーディアン紙に、実は昨年にも掘削装置で作品発表を計画していたと明かした

今回の抗議行動について、カプーアは同僚や友人をはじめ多くの人々に参加を呼びかけたと語り、こう続けた。

「市民として政治に対する関心や意見をもつことは、最低限の義務だと言えます。しかし、世界中の政府が抗議活動を禁止していることは由々しき事態ですし、禁止するだけでなく実際に逮捕者も出ています。もし私たちがパレスチナ問題について抗議をするのであれば、その自由は担保されるべきです。今をファシズムと呼ぶのは、むしろ個人の自由がどれほど奪われているかを見誤っているほど、生易しい表現です」

今回の抗議活動に対して、シェルUKの広報担当者は次のような声明を発表した。

「当社は会場での安全確保を最優先事項に掲げています。グリーンピースは許可なく掘削プラットフォーム周辺の立ち入り制限区域に侵入しました。この区域は、人々を保護し事故を予防するために設けられています。しかし、彼らの行動は極めて危険で、従業員や活動家自身の命を危険にさらしたのです。当社は個人や組織の権利を尊重しますが、それは安全が確保された上で、法の範囲内で行われるべきです」

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