幻のネガから蘇るビートルズの「素顔」──ポール撮影の秘蔵写真展がロンドンで開催

世界的スターになる前夜のビートルズの姿を収めた写真展が、ロンドンのガゴシアンで開催される。1963年12月から1964年2月の間にポール・マッカートニーが撮影した写真18点で構成される本展では、サイン入りプリントを購入することもできる。

渡米前に撮影された写真たち。メンバーの他にも、ブライアン・エプスタインやマル・エヴァンズなど、ビートルズを支える人物が写っている。Photo: © Paul McCartney, Courtesy Gagosian
渡米前に撮影された写真たち。メンバーの他にも、ブライアン・エプスタインやマル・エヴァンズなど、ビートルズを支えた人物が写っている。Photo: © Paul McCartney, Courtesy Gagosian

気の知れた仲間にしか見せない顔は誰にだってある。それは、ロックンロールを世界に広めたビートルズだって同じだろう。

8月28日からロンドンのガゴシアンで開催される「Rearview Mirror: Liverpool-London-Paris」は、まさにそんな彼らの素顔を収めた写真展だ。本展では、『プリーズ・プリーズ・ミー』と『ウィズ・ザ・ビートルズ』を発表し、爆発的に人気が上昇し始めた1963年12月から、アメリカを初めて訪れた1964年2月までの期間に、ポール・マッカートニーが撮影した写真18点が展示される。これらの写真は、半世紀以上行方不明とされていたネガフィルムやコンタクトシートから数量限定でプリントされたもの。マッカートニーの直筆サイン入り、本人がデザインした特注の額縁に収められている。

ガゴシアンで写真部門のディレクターを務めるジョシュア・チュンは、「芸術的価値」に基づいて展示作品を選んだと説明。スターダムを目前にしたビートルズを捉えた作品群について、次のように語っている。

「もしかすると彼らは歴史が変わる瞬間を予見していたのではないでしょうか。その瞬間を自らの手で写真に収めたかったのかもしれません。そして、自身が見ていた世界を残すために、カメラを手に取ったのだと思います」

今回の写真は、すでにビバリーヒルズのガゴシアンで開催された大規模展でも公開されているが、ロンドン展では、ロンドン、リヴァプール、パリでの限られた時期に焦点を絞っているのが特徴だ。

数カ月間にわたってマッカートニーが撮影した写真の中には、舞台裏で出番を待つメンバーたちの姿や、当時の交際相手であるジェーン・アッシャーの実家の屋根裏部屋で撮ったセルフィーなどが含まれている。マッカートニーがガゴシアンのYouTube動画で振り返っている通り、実はこの部屋は、1965年発表の「イエスタデイ」のメロディを思いついた場所でもある。

「この部屋と、そこに置いてあったピアノにはたくさんの思い出があります。夢の中であるメロディーがずっと鳴っていたんです。目を覚ました後も頭から離れなくて。いいメロディーだなと思い、メンバーに聴いたことがあるか尋ねてみたところ、誰も知らないというので、私たちの曲として発表することにしたんです。それが『イエスタデイ』でした。いい思い出です」

「イエスタデイ」を思いついた屋根裏部屋で自撮りをするポール・マッカートニーPhoto: © Paul McCartney, Courtesy Gagosian
1963年にロンドンで開催されたクリスマス・コンサートの舞台裏。Photo: © Paul McCartney, Courtesy Gagosian
《John backstage at the London Palladium, 12 January 1964》 Photo: © Paul McCartney, Courtesy Gagosian
パリ・シャンゼリゼ通りにて。Photo: © Paul McCartney, Courtesy Gagosian

作品からは、当時の彼らがまだ世界的な知名度を得ていなかったことがうかがえる。例えば、《John on the Champs-Élysées, Paris, 15 January 1964(シャンゼリゼ通りを歩くジョン 1964年1月15日)》と題された写真では、レノンの周りにまったく人だかりができておらず、周囲を気にすることなく街中を歩けていたことがわかる。

会期中に渡英予定のあるビートルマニアは、アップル・コアやアビー・ロード・スタジオとあわせて、ギャラリーを訪れてみてはいかがだろう。運が良ければ購入のチャンスもある。価格は2万〜8万5000ドル(約295〜1250万円)だ。

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