米史上最大級、ラファエロ展が来春開催! ルーブル、ウフィツィ美術館などから200点が大集結

ニューヨークのメトロポリタン美術館は、2026年3月からルネサンスの巨匠ラファエロ(1483-1520)の大規模展を開催すると発表した。ラファエロが生涯に制作した約500点のうち200点が一堂に会する、アメリカ史上最大級のものとなる。

ラファエロ《バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像》(1514–16)Photo: ©RMN-Grand Palais and Art Resource, NY/Musée du Louvre, Paris

メトロポリタン美術館は、2026年3月29日から6月28日までアメリカ史上最大級となるラファエロ展を開催すると発表した。

「ラファエロ:崇高なる詩」と題されたこの回顧展は、メトロポリタン美術館の素描・版画部門のキュレーターであるカルメン・バンバッハが監修を務める。彼は2017年に同館で開催され、70万人を動員した展覧会「ミケランジェロ:神聖なる素描家・デザイナー」を企画した実績を持つ。

ラファエロは、レオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロとともに「ルネサンスの三大巨匠」と呼ばれる。彼は1483年、イタリアのマルケ州北部に存在したウルビーノ公国に宮廷画家の父のもとに生まれた。幼少期からその才能を見出されて絵画工房に弟子入りし、10代で教会の宗教画を手掛ける。1504年から1508年にかけてはフィレンツェに在住し、ダ・ヴィンチやミケランジェロといったライバルと最も権威ある依頼をめぐって競い合った。その後、教皇庁の招きでローマに居を移し、1520年に34歳で病死するまで自身の工房を率いて野心的なプロジェクトを次々に実現した。

ラファエロが短い人生に手掛けた作品は膨大で500点以上存在すると言われているが、同展ではそのうち、絵画、素描、タペストリー、装飾美術品を含む200点が集結する。

ラファエロ《聖母と幼児キリスト、幼児洗礼者ヨハネを伴う風景(アルバの聖母)》(1509-11)Photo: National Gallery of Art, Washington, D.C.

プレスリリースによると、同展では、ラファエロの並外れて創造的な精神と共に、盛期ルネサンス美術への注目すべき貢献が明らかにされる。展示は年代順で構成され、初期の生活から、巨匠として華々しく台頭するまでの旅路を辿る。その中で、彼が作品で用いたさまざまな種類の図像に注目したり、女性をどのように描いたかを考察したりするセクションも設けられる。

同展について、メトロポリタン美術館館長のマックス・ホラインは声明で次のように述べている。

「この前例のない展示は、イタリア・ルネサンスの真の巨人であるラファエロの才能と遺産について、画期的な視点を提供するものです。来場者は、世界各地から集められた、最も象徴的で滅多に貸し出されることのない作品群を通じて、息をのむような彼の才能の多彩さを体験する、極めて貴重な機会を得ることになります。その多くは、これまで一堂に展示されたことがない作品ばかりです」

ホラインの言う通り、同展の展示作品はロンドンの大英博物館とナショナル・ギャラリー、バチカン美術館、マドリッドのプラド美術館、フィレンツェのウフィツィ美術館、フランクフルトのシュテーデル美術館、ウィーンのアルベルティーナ美術館など世界の名だたる美術館から集められる。その中には、ルーブル美術館の《バルダッサーレ・カスティリオーネの肖像》(1514-16)、ローマのボルゲーゼ美術館の《一角獣を抱く婦人の肖像》(1505-06)、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの《風景の中の聖母子と幼児洗礼者ヨハネ(アルバの聖母)》(1509-11頃)などといった通常は並び得ない名画がラインナップされている。

一方、同展の立役者とも言えるキュレーターのカルメン・バンバッハは声明で、「この展示をまとめ上げるための7年間の旅路は、この記念碑的な芸術家に対する私の理解を再構築する機会でもありました。彼の独特な芸術性と、その作品の視覚的な力強さ、思慮深さ、そして優しさに関わることができるのは、実にスリリングです」と語った。

この展覧会は巡回を予定していないという。メトロポリタン美術館は、展覧会に合わせて完全図版入りの図録を出版する予定だ。(翻訳:編集部)

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CULTURE GALLERY 2025.07.01
ウフィツィ美術館で見るべき名作23選──古代ローマ・ルネサンスの至宝やマニエリスムの代表作など
TEXT BY STEPHANIE CASH
ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》など、誰もが何かで一度は目にしたことがある有名絵画をはじめ、圧倒的な質と量の所蔵品を誇るウフィツィ美術館。イタリアの芸術・文化の豊かさを肌で感じられるこの美術館で見逃せない名作23点を紹介する。

1. ジョット《オグニサンティの聖母》 (1300-05年)Photo: Uffizi Gallery
ルネサンスの先駆けとも言えるこの作品は、西洋美術が新たな段階へと進むきっかけを作り、1世紀以上にわたってフィレンツェの画家たちに影響を与え続けた。【作品の詳細はこちら

2. シモーネ・マルティーニ《受胎告知》(1333年)Photo: Uffizi Gallery
上部に華麗な彫刻が施され、金箔とテンペラで描かれたこの大作は、ルネサンスへの移行期における傑作の1つ。【作品の詳細はこちら

3. パオロ・ウッチェッロ《サン・ロマーノの戦い:ニッコロ・マウルジ・ダ・トレンティーノは、ベルナルディーノ・デラ・カルダを倒した》(1435-40年頃)Photo: Uffizi Gallery
1432年のサン・ロマーノ(ピサ)の戦いを描いた3連作の板絵の1枚。【作品の詳細はこちら

4. ピエロ・デッラ・フランチェスカ《ウルビーノ公夫妻の肖像》(1473-75年)Photo: Uffizi Gallery
ルネサンス期の最も有名な肖像画の1つであり、傭兵隊長として活躍したフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公爵と、出産後に26歳で命を落としたその妻バッティスタ・スフォルツァを描いた作品。【作品の詳細はこちら

5. ピエロ・デル・ポッライオーロ、サンドロ・ボッティチェリ《7つの美徳》(1469-72年)Photo: Uffizi Gallery
仮想の最高裁判所のようにも見える威風堂々たるこの連作絵画には、7つの美徳を擬人化した女性像が描かれている。【作品の詳細はこちら

6. サンドロ・ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》(1485年)Photo: Uffizi Gallery
さまざまな雑貨に、この作品が印刷されているのを見たことがある人は多いに違いない。彼女はリーボックのスニーカーの売り上げに貢献し、著名アーティストのインスピレーションの源泉になってきた。【作品の詳細はこちら

7. イノシシ(紀元前2-1世紀)Photo: Uffizi Gallery
このリアルなイノシシは、無名のローマ人彫刻家による大理石の彫刻で、ヘレニズム時代のブロンズ像を参考にしたものと考えられている。【作品の詳細はこちら

8. バッチョ・バンディネッリ《ラオコーン》(1520-25年)Photo: Uffizi Gallery
叙事詩『アエネーイス』の一場面を表現した古代ギリシャの彫刻は、1506年にローマのエスクイリーノの丘で発見されて以来、数多くの芸術家たちに影響を与えている。【作品の詳細はこちら

9. ピエロ・ディ・コジモ《アンドロメダを救うペルセウス》(1510-15年)Photo: Uffizi Gallery
翼のあるサンダルを履いたペルセウスが空を飛び、尻尾の先がくるくる巻いた巨大な海の怪獣がアンドロメダを襲おうとする場面を描いている。【作品の詳細はこちら

10. レオナルド・ダ・ヴィンチ《東方三博士の礼拝》(1482年)Photo: Uffizi Gallery
1481年にダ・ヴィンチは、フィレンツェ近郊のサン・ドナート教会に飾るための絵を、アウグスチノ会の修道士たちから依頼された。【作品の詳細はこちら

11. ラファエロ《ヒワの聖母》(1506年2月以前)Photo: Uffizi Gallery
ラファエロの《ヒワの聖母》は、ミケランジェロの《聖家族》の近くに展示されている。2人の画家がともにフィレンツェに住んでいた時期に制作されたことを考えると、納得できる組み合わせだ。【作品の詳細はこちら

12. ミケランジェロ《聖家族(別名:トンド・ドーニ)》(1505-06年)Photo: Uffizi Gallery
ミケランジェロが完成させた板絵の中で唯一現存するトンド(家庭に飾る目的で描かれた円形宗教画)。【作品の詳細はこちら

13. ヘルマプロディートス(紀元2世紀)Photo: Uffizi Gallery
元前2世紀の古代ギリシャのブロンズ像をもとにしてローマ時代に作られたこの作品は、ギリシャのパロス島で採掘された大理石から彫られている。【作品の詳細はこちら

14. エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン《自画像》(1790年)Photo: Uffizi Gallery
画家ルイ・ヴィジェの娘で、有名な画商ジャン=バティスト=ピエール・ルブランの妻だったエリザベートは、肖像画で成功を収めた作家だ。【作品の詳細はこちら

15. パルミジャニーノ《長い首の聖母》(1534-40年)Photo: Uffizi Gallery
聖母の長い首と指、そして乳首とへそが見える薄布の衣服が描かれたこの絵には、典型的な聖母子像にはない官能性がある。【作品の詳細はこちら

16. ポントルモ《エマオの晩餐》(1525年)Photo: Uffizi Gallery
ポントルモの《エマオの晩餐》は、復活したイエスが旅人に扮し、2人の弟子とともに食卓にいる様子を描いている。【作品の詳細はこちら

17. ロッソ・フィオレンティーノ《エテロの娘たちを守るモーセ》(1523-27年)Photo: Uffizi Gallery
筋骨隆々の男たちが、カンバスから飛び出そうな勢いで前面に押し出されている混乱したシーンは、聖書の物語の一場面で、そこに登場するモーセが活劇のヒーローのように描かれている。【作品の詳細はこちら

18. ティツィアーノ《ウルビーノのヴィーナス》(1538年)Photo: Uffizi Gallery
16世紀のヴェネツィアでは横たわる裸婦像が大流行した。【作品の詳細はこちら

19. カラヴァッジョ《バッカス》(1598年)Photo: Uffizi Gallery
カラヴァッジョは、たびたび暴力沙汰を起こしただけでなく、(殺人を含む)より重大な犯罪に関わったことでも知られる。【作品の詳細はこちら

20. ヘリット・ファン・ホントホルスト《Supper Party With Lute Player》(1619年頃)Photo: Uffizi Gallery
オランダのカラヴァッジスティ(カラヴァッジョの追従者、カラヴァッジョ派)のリーダーだったホントホルストは、キアロスクーロ(陰影法)を極限まで追求した画家だ。【作品の詳細はこちら

21. アルテミジア・ジェンティレスキ《ホロフェルネスの首を斬るユディト》(1620年頃)Photo: Uffizi Gallery
この有名な物語は多くの画家が題材として取り上げているが、その中でも最も真に迫ったものの1つがこの作品だ。【作品の詳細はこちら

22. ユストゥス・スステルマンス《Madonna “Domenica delle Cascine,” la Cecca di Pratolino, e Pietro Moro》(1634年)Photo: Uffizi Gallery
人物同士がやり取りをしている瞬間をカメラで捉えたかのように描写されている。【作品の詳細はこちら

23. レンブラント《Portrait of an Old Man (The Old Rabbi)》(1665年)Photo: Uffizi Gallery
無数のキリスト教美術が並ぶ中、ユダヤ教の聖職者であるラビを描いた肖像画。【作品の詳細はこちら

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