アレクサンドリア・ビエンナーレが12年ぶりに復活。来年9月、古代エジプトの史跡を舞台に開催

ヴェネチアサンパウロに次ぎ、世界で3番目に古いビエンナーレであるアレクサンドリア・ビエンナーレが2026年の再開を発表した。不安定な政情で中断されたのち、12年間開催されていなかったエジプトを代表するアートイベントの1つが復活することになる。

ライトアップされたアレクサンドリアのカイトベイ要塞。15世紀、世界七不思議の1つである古代エジプトのアレクサンドリアの大灯台が地震で倒壊した跡地に建設された(2023年11月24日撮影)。Photo: AMIR MAKAR/AFP via Getty Images

アレクサンドリア・ビエンナーレが12年の中断を経て復活し、2026年9月に第27回を開催することが発表された。「This Too Shall Pass(これもやがて過ぎ去る)」と題された来年のビエンナーレのキュレーターは、アーティストのモアタズ・ナスル。メイン展示には地中海地域から55人の作家が集結する。復活に関するアートニュースペーパー紙の取材に、ナスルはこう答えている。

「再開するにあたっては、高いレベルを目指さなければなりません。エジプトのアートシーンは、長い間静まりかえって酸素が底まで届かなくなっている湖のようです。我われはそこに大きな石を投げ入れて波を起こしたい。今こそ変革の時なのです」

アレクサンドリア・ビエンナーレは1955年、ガマル・アブデル・ナセル首相(56年に大統領就任)の時代に創設され、初期の参加者は地中海地域の作家に限られていた。当時はエジプトからイギリス軍が撤退し、周辺諸国も独立に向かっていた時期ということもあり、自国のアイデンティティとからめて芸術的伝統を追求していたこの地域のアーティストが才能を発揮する舞台となった。

しかし2011年、ビエンナーレは「1月25日革命(エジプト革命)」によるムバラク政権崩壊の混乱のために中止された。2014年にはいったん再開したが、財政難とムバラク元大統領の裁判や軍のクーデターをめぐって政治や社会が不安定化したことで再び中断され、現在に至る。

2017年のヴェネチア・ビエンナーレにエジプト代表として参加したナスルは、来年のアレクサンドリア・ビエンナーレは創設時の地域連帯の精神を維持しつつ、それ以外の国々のアーティストにも何らかの形で門戸を開く考えであることをアートニュースペーパー紙に語っている。

アレクサンドリアは、古代地中海における文化・商業の中心地だった。ナスルのキュレーションもその歴史を反映したものになり、ローマ円形劇場、アレクサンドリア図書館、アレクサンドリアの大灯台の跡に建てられたカイトベイ要塞、アレクサンドロス大王の時代に建設されたフアード通りなど、エジプトの歴史を象徴する史跡が、メイン展示の会場として予定されている。また、アレクサンドリアにある複数の美術館で、若手のエジプト人アーティストに焦点を当てた小規模な展覧会も行われる。(翻訳:石井佳子)

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