ジェフ・クーンズがガゴシアンに電撃復帰! 批評的地位と市場価値の回復が目的か

ジェフ・クーンズが、4年間在籍したペース・ギャラリーを離れ、ガゴシアンに再び所属した。背景には、制作資金の問題や市場評価の変化があるとみられる。

2016年10月28日にニューヨーク市のプラザホテルで開催された「フランス文化協会トロフィー・デ・ザール・ガラ」に出席したジェフ・クーンズ(写真左)とラリー・ガゴシアン。Photo: Sylvain Gaboury/Patrick McMullan via Getty Images

8月27日、ジェフ・クーンズガゴシアンに再び所属したと発表された。クーンズは2021年、長年籍を置いたガゴシアンとデイヴィッド・ツヴィルナーから「環境の変化」を求めてペース・ギャラリー移籍。そこからわずか4年での古巣への復帰となるが、デイヴィッド・ツヴィルナーへの再所属は報じられていない。

復帰の予兆はあった。今年5月に開催されたフリーズ・ニューヨークのガゴシアンブースでクーンズの個展が行われていたからだ。同展では、クーンズの個人コレクションから「ハルク・エルヴィス」シリーズの立体作品3点が出品されていた。アートニュースペーパーによると、作品は全て350万ドル(約5億円)で販売されたという。

移籍の理由は明言されていないが、昨秋、アートネットのコラムニスト、ケニー・シャクターは次のように伝えている。クーンズは2024年、マイセン風の新しい彫刻シリーズの制作を計画し、ペースはこの事業の資金として、投資家から集めた5000万ドルから1億ドル(現在の為替で約73億円~147億円)を投じた。その後、制作に追加資金が必要になったものの調達できず、間もなくクーンズはペースから離れたという。

クーンズの彫刻《ラビット》(1986)は、2019年にオークションで9110万ドル(現在の為替で134億円)で落札され、存命作家による作品の最高額を記録し、現在も塗り替えられていない。だが近年クーンズの批評的地位は低下し、市場での人気も衰えている。アートネットが報じたところによると、彼のオークション売り上げ総額は2019年の1億1100万ドル(同・約163億円)から昨年は2980万ドル(同・43億円)にまで減少した。現在、特定の有力コレクターやディーラーがこの状況を変えようと動いているという。

クーンズとガゴシアンの縁は90年代半ばから始まり、20年以上に渡る。クーンズはビバリーヒルズ、香港、ロンドン、ニューヨークにあるガゴシアンの支店で13回の個展を開催し、「セレブレーション」(1994-2019)や「ポパイ」(2002-13)、「ゲイジング・ボール」(2012年-)といったシリーズを発表し、人気作家への道を駆け上がっていった。正式には発表されていないが、現在、世界に20拠点を持つメガギャラリーであるガゴシアンで、近日クーンズの個展が開催されることは間違いない。(翻訳:編集部)

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