ジェフ・クーンズの花咲く巨大彫刻がLACMA常設へ。リンダ&スチュワート・レスニック夫妻が寄贈
アメリカの実業家夫婦、リンダ&スチュワート・レスニックが、ジェフ・クーンズによる高さ約11メートルの花咲く巨大彫刻《スプリット・ロッカー》をロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)に寄贈した。ヴェルサイユ宮殿やロックフェラー・センターでも展示されたこの作品は、LACMAの新設ギャラリー付近に設置される予定だ。

ジェフ・クーンズの《スプリット・ロッカー》は、金属の骨組みを覆うおもちゃの頭部のような形が特徴だ。頭部の片方は木馬を、もう片方は恐竜を想起させ、表面には約5万本の花が植え込まれている。
この《スプリット・ロッカー》が、リンダ&スチュワート・レスニック夫妻からロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)に寄贈されることとなった。本作品は、これまでにヴェルサイユ宮殿やニューヨークのロックフェラー・センターでも展示されてきた。LACMA側は作品の価値を公表していない(こうした対応は寄贈発表時によく見られる)が、レスニック夫妻の2023年の税務申告書には、LACMAへの寄贈作品として9600万ドル(現在の為替で約138億5000万円)相当の作品が記載されていた。ちなみに同じスケールの別バージョンは、メリーランド州にあるミッチェル&エミリー・ウェイ・レイルズ夫妻の私設美術館グレンストーンに収蔵されている。
レスニック夫妻は以前からLACMAを支援してきた。彼らが2008年に行った4500万ドル(同約65億円)の寄付により、同館のパビリオンには夫妻の名が冠されている。レスニック夫婦の慈善財団の報告書によると、2023年度末までの一年間には1600万ドル(同約23億円)の寄付を行っており、2019年から2023年の間には、カリフォルニア工科大学(Caltech)に気候研究支援として7億5000万ドル(同約1082億6000万円)以上を拠出している。
彼らの資金提供の多くは環境分野に集中しているが、その一方で、レスニック夫妻のビジネス慣行に対して気候変動活動家からの批判も集まっている。また、スチュワート・レスニックが所有する農業・食品関連の持株会社は近年で40億ドル(約5772億円)の収益を報告しているが、複数の訴訟対象にもなっている。
2023年11月には、同夫妻の影響力に対する批判がLACMAにも及んだ。美術館の年次ガラ開催時に、レスニック夫妻が水資源の私有化を推進してきたことに対するデモが行われたのだ。
今回の寄贈は、同館の敷地内に新たな大規模彫刻作品を導入するというLACMA館長マイケル・ゴヴァンが掲げる長期目標の一環として行われたわけだが、こうして《スプリット・ロッカー》は、同館にすでに常設されているクリス・バーデンの《アーバン・ライト》やトニー・スミスの《スモーク》といった巨大彫刻と匹敵するスケールの作品として加わることになった。
なお、LACMAがクーンズの大規模作品の展示を試みたのはこれが初めてではない。2007年には、1943年製の蒸気機関車モデル(全長約21メートル)を巨大クレーンに吊るすという別の大型プロジェクトを計画していたが、ゴヴァン館長のもと一定の支持を得ていたものの実現には至らなかった。報道では、約2500万ドル(現在の為替で約36億円)のコストと見積もられていた。(翻訳:編集部)
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