超希少ロレックスや31.86カラットのピンクダイヤが登場! アブダビでサザビーズがオークション初開催

中東地域でのビジネス強化を進めているサザビーズが、12月にアブダビでラグジュアリー分野の大規模オークションを初開催する。豪華な出品ラインアップの目玉となるのは、30カラットを超えるピンクダイヤモンドや超希少な高級時計、スーパーカーなどだ。

オークションの舞台となるザ・セントレジス・サディヤット・アイランド・リゾート。Photo: Courtesy sotheby's

今年12月3日から5日、サザビーズがラグジュアリー分野の大規模オークションをアラブ首長国連邦の首都、アブダビで初開催する。アブダビ・コレクターズ・ウィークと名づけられたこのセールには、高級時計やスーパーカー、ジュエリー、不動産などが出品予定で、オールドマスターからコンテンポラリーに至る「美術館クラス」のアートも展示される。

サザビーズは声明で、アブダビ投資庁(ADIO)とのパートナーシップで実施されるこのオークションの開催時期は、「中東地域で最も忙しく、最もダイナミックな週」になるだろうと述べている。同じ州にF1アブダビ・グランプリ、米シンクタンクのミルケン研究所による中東・アフリカサミットに加え、アブダビ・ファイナンス・ウィークやビットコインMENAなどのカンファレンスが集中するからだ。

また、会場となるザ・セントレジス・サディヤット・アイランド・リゾートのあるサディヤット島には、ルーブル・アブダビや来年オープン予定のグッゲンハイム・アブダビ、間もなく開館するザイード国立博物館などが並ぶ文化地区がある。

サザビーズでラグジュアリー部門のグローバル責任者を務めるジョシュ・プーランはUS版ARTnewsに対し、12月のセールへの抱負をこう語った。

「これはサザビーズにとって戦略的に重要な節目であり、グローバルな事業展開の拡大につながるものです。当社が世界で展開するオークションにおいては、中東からの参加者が近年増加の一途を辿っており、特にアラブ首長国連邦(UAE)の顧客の多さが目立ちます。文化や高級品市場のハブとして勢いのあるアブダビでのオークション開催は、私たちのビジネスとオークション市場の双方に大きなインパクトを与える意欲的なものとなるでしょう」

今年2月、サザビーズはサウジアラビアで同国初の国際的なオークションを開催しており、アブダビ・コレクターズ・ウィークはそれに続く大規模セールとなる。ドバイを拠点とする小売大手、チャルホブ・グループの報告書によると、サザビーズは、活況を呈する中東の高級品市場開拓を狙い、同地域でのビジネスを強化しているという。同報告書によると、中東地域の市場規模は昨年、前年比6%増の130億ドル(最近の為替レートで約1兆9000億円、以下同)近くにまで成長している。

この戦略は功を奏しているようで、サザビーズは今年初め、2024年に中東地域のバイヤー数が過去最高を記録したと報告。同社UAE責任者兼中東地区バイスチェアマンのカティア・ヌヌ・ブエイズは声明でこう述べている。

「いかなる尺度で見ても、アブダビは文化とラグジュアリー分野における世界有数のデスティネーションになっています。そうした観点から、アブダビ投資庁と手を組み、コレクションとラグジュアリーな体験の未来像を提示できることを嬉しく思います」

12月のオークションで特に注目されるのは、ややオレンジがかったピンク色の大粒ダイヤモンド「デザート・ローズ」だ。同種のダイヤモンドとしては、これまで鑑定された中で最大となる31.86カラットのペアシェイプ(洋梨型)で、「ピンクとオレンジが混ざり合った夕日のような独特の輝きを放ち、美的価値としても宝石学的に見ても重要な逸品」だと解説されている。予想落札価格は、500万ドルから700万ドル(約7億3500万〜10億3000万円)。

このほか、1960年代後半から70年代前半に製造された希少なロレックス コスモグラフ デイトナ「オイスター・アルビノ」には、50万ドルから100万ドル(約7350万〜1億4700万円)の予想落札価格が付けられている。スーパーカーでは、2017年モデルのパガーニ・ゾンダ760リビエラが出品予定で、予想落札価格は950万から1050万ドル(約14億〜15億4400万円)。

サザビーズが高級品分野の強化を進めている背景には、美術品市場の低迷がある。同社は2025年上半期の業績を公表していないが、広報担当者はUS版ARTnewsの取材に対し、2024年の高級品の連結売上高は3年連続で20億ドル(約2940億円)を超え、総売上高60億ドル(約8820億円)の3分の1を占めたと回答。2019年比で3倍に成長し、業界最高水準を維持しているという。また、プライベートセール部門においても、高級品販売は前年比350%の伸びを記録したと付け加えた。

サザビーズとアブダビとの関係は深く、昨年11月にはアブダビの政府系投資会社ADQが、サザビーズに10億ドル(約1470億円)の戦略的な資金注入を行うことを発表した。この投資は、サザビーズの財務状態改善を助け、さらに将来へ向けた強固な布石になるものだ。

サザビーズのチャールズ・スチュワートCEOは、同社を美術界に限定せず、世界的なラグジュアリーブランドへ進化させようとしており、中東への軸足のシフトはその戦略の一環だとされる。同社とパートナーシップを結ぶADIOのリテール部門責任者であるヌーラ・アル・フォラティは、12月のセールの意義を声明で次のように強調した。

「コレクターズ・ウィークが世界で初めて開催されるアブダビで、私たちは希少な逸品を披露するだけではありません。それは、真のラグジュアリーが持つ静かな力によって形作られた、この街の文化的な深みを再確認させるまたとない機会になります」(翻訳:石井佳子)

from ARTnews

あわせて読みたい