新種のカタツムリをピカソにちなんで命名。「キュビスムを感じさせる」その形状とは?

東南アジアで46種の新種カタツムリを発見した研究チームが、そのうち1種をパブロ・ピカソにちなんで「アナウケン・ピカソ」と命名した。幅3ミリメートルの極小サイズながら、角張った殻の形状が「キュビスム的要素」を感じさせることが理由だという。

東南アジアで新たに発見されたカタツムリの一部。Photo: Courtesy Gojšina et al./ZooKeys
東南アジアで新たに発見されたカタツムリの一部。Photo: Courtesy Gojšina et al./ZooKeys

新たに発見された生き物の学術名に、著名人の名が刻まれることは珍しくない。たとえば、2019年にアムステルダムで発見された小さな甲虫の一種には、ビートルズにちなんで「プトマファガス・ザ・ビートルズ(Ptomaphagus thebeatles)」という名が付いているし、2009年にマレーシアで発見された100種類以上のクモの名前は、デヴィッド・ボウイ由来している。もちろん芸術家にちなんでつけられた名前も存在し、ある植物の化石には印象派の巨匠、クロード・モネにちなんで「モネティアントゥス(Monetianthus)」という名が付いている。

そんななか、新たにタイで発見された極小サイズのカタツムリには、「アナウケン・ピカソ(Anauchen picasso)」という学術名が付けられた。幅わずか3ミリメートルの小さな殻を背負っているこのカタツムリは、一般的なカタツムリと比べて殻が角張っており、研究者たちは「キュビスム的要素を感じた」ことから、パブロ・ピカソにちなんだ名前をつけたという。

一般的なカタツムリの殻とは異なり、やや角張っている。Photo: Courtesy Gojšina et al./ZooKeys
一般的なカタツムリの殻とは異なり、やや角張っている。Photo: Courtesy Gojšina et al./ZooKeys

軟体動物学者のヴカシン・ゴイシナとバルナ・パール・ゲルゲリーが学術誌「ZooKeys」に発表した論文によれば、アナウケン・ピカソはラッパガイ亜科に属する。ラッパガイ亜科では、すでに280種以上が確認されているが、その多くは大きさ5ミリメートル以下のものばかりで、採集し正確に分類することが困難だった。このため、ゴイシナとゲルゲリーは再分類を目的として、カンボジアやタイ、ミャンマーといった東南アジア地域でフィールドワークを実施。これにより、新たに46種類ものカタツムリが発見されたという。

新種のカタツムリをはじめとする極小生物は環境に特化した進化を遂げており、環境がわずかに変化しただけでも絶滅してしまう可能性がある。これらの新種が発見された東南アジアでは開発が急速に進められており、森林伐採や石灰岩の採掘によって生息環境が破壊されている。だが、ピカソの名を冠した極小カタツムリの発見は、芸術と科学を結びつけるユニークなエピソードであると同時に、東南アジアの生物多様性への関心を呼び起こしている。(翻訳:編集部)

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